昨年11月9日の米国大統領選挙以来、株も為替も大きく上伸し、年明けにはドル円は120円、NYダウは2万ドル、日経平均は2万円の大台超が期待されましたが、結局のところ4日の年明けだけは調子がよかったものの5日の東京タイムからはドル売りがユーロドルにもドル円にも明確に現れることとなり、為替相場は確実に調整局面入りすることとなりました。
本来は1月20日就任式まではリスクオン相場が継続するものと期待されてきたわけですが、どうやら市場はそういう方向ではなくなっており、相場の変化に十分注意することが必要になりそうです。
トランプ自身の発言がリスクとなる相場
大統領選当選以来ほとんどメディアには登場せず記者会見も開いてこなかったトランプ氏ですが、ここへ来てツイッターで呟いた内容が波紋を呼び始めており、特に国内外の自動車メーカーのメキシコ工場生産について厳しい課税の呟きを始めていることが波紋を呼び始めています。
※トランプ呟き
※フォードメキシコ生産を白紙に
GMがメキシコ製のクルマを無税で導入するのはおかしい。もっと大きな税金を支払え
と呟いた内容や
フォードがトランプの意向にしたがってメキシコでの生産計画を白紙撤回した
などという呟きがでたとたんに市場はリスクオフの動きを明確にしはじめており、
今度はトヨタのメキシコ生産についても大幅増税を示唆する呟きが登場したことから株価にも影響がではじめています。
もともとこうしたエキセントリックな発言は同氏の専売特許ともいえるものでしたから、驚くほどのことはないのですが、なぜか市場はトランプは大統領になればかなりまともな政策に戻ると勝手に期待してきた部分も多く、やはりこれまでの大統領とは大きく異なる存在であることを目の当たりにして改めてリスクを感じ始めていることがわかります。
※トランプトヨタのメキシコ生産に言及
1月11日の初の記者会見を市場は嫌気
またトランプは1月11日に当選後初めての記者会見を開催する旨をツイートしており、こちらも市場からひどく嫌気され、ドル売りの材料になっていることは間違いないようです。
サマーズ元米財務長官は、ドナルド・トランプ氏の次期米大統領就任に伴うリスクについて最近メディアに投資家はあまりにも無頓着だと警告を発しています。同氏は保護主義的な貿易政策を採用する可能性や外交政策、国内の社会政策の変更といった問題がきわめて重大な不確実性をもたらしていると指摘しており、このまま相場がするする上昇することはありえないことを暗に示唆した発言を行っており、相場は現実にトランプの実際の政策と言動に懸念を持ち始めているということができそうです。
米中間の衝突も大きなリスクに
さらに年末台湾との電話会議をスタートさせたことを皮切りに、米中関係は相当ギクシャクし始めており、今年は米中関係の悪化が相場に相当ネガティブな材料を突きつけることになりそうな勢いが見え始めています。
中国系通信社が報じた内容によれば、トランプが大統領就任により中国製品に対して貿易戦争へのきっかけとなるような過酷な基準を設けた場合は、米国の会社に対する精査基準を引き上げると中国の関係筋が発言していることが報道されはじめており、通商問題、とりわけ中国製品に対する関税の強化などが実現した場合には、本格的な米中間の貿易戦争が勃発することが予想されはじめています。
ハネムーン期間を待たずボラタイルな相場展開か
なぜトランプ大統領に決定した直後から根拠のない楽観熱狂相場が示現することになったのかは今もってその理由がよく判らない状況ではありますが、いよいよ今月20日に現実にトランプ大統領が誕生することでようやく市場は夢から覚めたようで、随所でそのリスクを改めて認識した動きがではじめています。
現状ではドル高、株高が完全に解消したわけではありませんが、方向感を失ったことだけは間違いないようで、ここからは当分トランプの一挙手一投足にいちいち相場が振り回されることになりそうで、嫌な相場展開がいよいよ現実のものになってきます。
とくにツイッターを使った不意打ちのような発言はいつリスクオフになるかわからないため、為替にとっては非常にやりにくい動きになることは間違いなく、ポジションをもったらしっかりストップロスを入れておくことが益々必要になりそうです。
本来政権発足から100日程度はハネムーン期間としてあまり大きな動きはでにくいのが特徴ですが、トランプ政権は最初から一期4年しか目指していないという話もあり、いきなりスタートダッシュからかなり様々なことを持ち出してくる可能性もあり、これまでの政権誕生のアノマリーとは異なる動きを相場が起こしてくるリスクにも相当な注意が必要となりそうです。
市場期待剥落時の大幅下落に注意
米国市場と国民のもっとも大きな期待はやはり減税にあるようですが、下院ではこれが優先して議論されるべきであるにもかかわらず、ほかの案件が前面にでてきつつあり、国民の期待通りに話が進まないと相場もかなり嫌気した動きになることが予想されてきています。
通商問題もどこまで議会がそれに係わるかが大きなポイントになりますし、財政の大幅支出もそもそも小さな政府を目指す共和党との親和性が低いだけに具体的な協議の過程で、当初のトランプ発言との齟齬が目立つようになれば当然市場期待の剥落から相場が下落することが予想されます。
特に米国の株式相場は税制改正から今年の申告にしたほうが有価証券売却の税金が安くなるのではないかとの期待から無理して越年して株を保有した個人投資家が多いと言われており、期待通りの減税が実現できないとなれば株の売却から株価が大幅下落し、為替や債券にも影響を与えることになりかねない状況に直面しています。
ドル円は月足20ヶ月平均の上にあるか下にあるかが重要
※ドル円月足20ヶ月移動平均線
ドル円は年明け早々かなり深い調整を強いられることになっていますが、それでも月足の20ヶ月移動平均線の上側で相場が展開している限りは押し目買いを続けるべき状況が継続しているといえます。
ただし、直近のこの20ヶ月移動平均のレベルは113.80円レベルにあり日々変化しつつありますので、このレベルを明確に下回っていき、特に月末の終り値が下抜けてしまいますと11月からはじまった上昇トレンドも一旦終了で今度は戻り売りで対応しなくてはならない時間帯に突入することとなってしまいます。
この指標はヘッジファンド勢などもよく利用しているもので、彼らの保有するポジションにも大きな影響を与えるものとなっていますので、かなり注視が必要になりそうです。これまで118円超のレベルでは113円台というのはかなり遠い存在に見えましたが、足元で115円を割れるかどうかといった状況では1円ちょっと下までそれほど遠くはなくなっていますから、かなり意識しておく必要がありそうです。
昨年末までは年明けも少なくとも1月20日まではご祝儀を含めて上昇相場が株も為替も継続するといった楽観的な見方が強かったわけですが、1月第一週でセンチメントは微妙に変化していることが強く感じられます。
ここからは上昇や下落などといった思い込みは捨てて柔軟に買いでも売りでも相場についていくことが重要になりそうです。
ただ、ボラティリティが大きいだけに間違ったエントリーポイントで相場に参入してしまうと投げと踏みに巻き込まれて大損するきっかけにもなりかねませんから相当用心して売買することが求められます。

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