6月から急激に上昇したかのように見えた米国の債券金利はまたしても下落傾向に入り、ドルが各国通貨に対して全面安の状況 になりつつあります。
春先にユーロが上昇してユーロ主体の相場展開が期待されたのですが、実は一旦収束しユーロ/ドルは1.12を超えたレベルで長らく上伸がとめられていましたが、いよいよユーロ中心の夏相場が展開しそうな状況になってきています。
ECBの出口戦略具体化にむけてユーロドルはさらに大きく上昇の可能性も
ユーロドルは20日のECB理事会のあとのドラギ会見を受けて、この先出口戦略を具体的に考えるものと理解したためか、大きく上伸し久々に1.16を明確に超える動きを見せてきています。
これが月足で1.15台を崩すようなことさえなければさらに上方向に加速する可能性がでてきているといえます。
まず、この先1.18まではほとんど大きなレジスタンスラインが存在しませんから、もう少しすんなり上昇することが見込まれますし、さらに1.18を上抜けるようであれば1.2を超えるレベルまで上昇することも想定しておく必要がありそうです。
為替相場は多くの場合、オーバーシュート気味に動くことが多くなりますから、とにかくユーロドルはこの夏一番のお勧め取引通貨となりそうで、しっかり順張りでついていくことを考えなくてはならない時間帯に入ってきていることがわかります。
ユーロは米国の株式市場が変調をきたせばさらにドル売りが加速することからまったく想定外の上昇を見る可能性も残されている点にはかなり注目しておくべきでしょう。
※ユーロドル週足チャート
米欧の中銀が資産縮小に動きはじめると株価の様相が激変する可能性も
足元ではとにかくドルがあらゆる通貨に対して安い状況が続いていますので当面ユーロドルが堅調に推移することは間違いないものと思われますが、米国が早ければ9月に資産縮小を開始し、ECBも同様に出口戦略に向けてテーパリングを始めた場合には市場にもたらされてきた金余りの過剰流動性の世界が一気に巻き戻ることになるため、少なからず相場に影響がではじめることも考えておかなくてはなりません。
7月11日、パリの会議に登場したJPモルガン銀行のダイモン会長兼CEOは、
「このような量的緩和(QE)は過去に例がなく、このようなQEを巻き戻した経験もない。従って、これがリスクを意味するかもしれないことは明らかだ。なぜならかつて経験したことがないからだ。」
と語り、市場の注目を集めています。
それもそのはずで翌日にはイエレン議長が議会証言で、「ゆっくり資産縮小をすれば市場にはほとんど影響がない」と説明したことと全く逆の見通しを語ったからです。
米国だけでも500兆円を越す保有資産の巻き戻しにこれまでQEにならってきた各国中銀が一斉に巻き戻しに習う動きをとれば、ダイモン会長が指摘するように、人々が考えているより少し大きな混乱をもたらすかもしれないのは明らかであり、米国を代表するメガバンクの経営者だけに暴落という言葉は避けているものの、株価が今のまま継続しなさそうであることを示唆する内容であることはどうやら間違いないようです。
実際ECBは足元で年間1兆ドルの資産買い入れをしていますが、これが巻き戻るだけでもかなりの影響がでることが予想されるだけに米欧で金融引き締めをはじめた場合にどのぐらいの影響が市場に出るかはよくわからないというのが実情です。
ダイモン会長も「われわれはどのように進展するかを正確に知っているかのように行動しているが、実は分からない」とも指摘しており、イエレン議会証言内容を完全に否定する内容となっています。
FRBはすでに6月FOMCにおいてまず月額で100億ドルペースで資産の縮小をはじめ、その後月500億ドルのペースにまで縮小額を段階的に増やす計画を示しており、上下両院の議会証言でも比較的小さいものになるから多少の金利の上昇はあると思うがなんら心配はないことを繰り返し強調しています。
資産縮小を9月のFOMC会合で決めた場合、市場では、今年3回目となる追加利上げは12月会合への先送りが想定されており、株式相場も一旦は安心感から史上最高値更新となっていますが、株式相場がいまの状況を続けられるかどうかはかなり怪しくなってきているといえます。
ドル円は米国の債券金利次第の状況だが一旦先に下落のリスクも
さて国内個人投資家の8割以上が手がけているドル円の先行きですが、7月の短期投機筋が思い切って買い上げたことから115円台までは到達するかのように見えました。
しかし、結果的にはイエレン議会証言段階で投機筋がいち早く反対売買をして逃げ切ったことからその後は大きく値を下げすでに111円台で推移しはじめていますので、チャートの見かけ上はかなり下落した感があります。
ただ、ユーロが8月に向けて上昇を継続することになればこのままドル円はさらに下方向を試すというまさかの展開も一応想定しておく必要がでてきています。
通常でも8月相場はドル円が弱い時期で下手をすると5円近く下押しする年も見受けられますので、ここから5円というと107円台に近づくラインまで下落する可能性があることは認識しておかなてくはなりません。
現実問題としては円高が大きく進む材料はほとんどありませんが、通貨の相対的な状況からドル安が進み、しかも米国の債券金利が下落を続けることになればドル円は8月段階でかなり下を試すリスクが高まっているといえるのです。
※ドル円週足チャート
8月は株価に調整が出やすい時期
危ない危ないといわれながらもジリ高を継続中の米国の株式相場もさすがに8月は日柄的に調整が入りやすくなるシーズンであることは確かなようです。
これが大幅な下落相場になるかどうかは依然としてわかりませんが、経済状況を見ても少しずつ利上げのネガティブな影響は確実に出はじめており、足元の浮かれ相場がそのまま続くとは到底思えないところにきていることは間違いありません。
通常ですと相場は下落の前に大きく走ってピークをつけるものですが、実はBIG5(Google Microsoft Apple Amazon Facebook)と呼ばれる大型株は既に年間で60%以上の上昇を果たしていますので、一部の株は既に走ってしまったあと と捉えることもできる状況です。
米国の株価に変化が現れるとすれば、やはりその前に債券市場が10年債金利で3%に近づくか、長短金利がフラットになるといった変化が現れることが、相場変化の大きなポイントになるものと思われます。
本来であればドル円は米国債券金利の上昇について一旦は上昇し、株式相場の下落に巻き込まれて大きく値を下げるのが普通ですが、先に下値を試してしまいますとこのシナリオとは違う動きになるリスクも考えておかなくてはなりません。
足元では各資産市場間の連携性というものがかなり崩れてしまっており、通常なら通貨が下がるべきところを連動しないといったわかりにくい動きが非常に多いのですが、ドル円に関しては米国の債券金利が上昇に転じない限りこの夏上方向を試す可能性は相当薄れてきているのではないでしょうか。
さらに米国の株式の下落やそれにつられる日本株の下落が加速した場合には上昇機会のないままに下値を試しにいく可能性が高くなりそうです。
ただ、逆に言えばこの下値はまた絶好の買い場になる可能性もあるわけで、下げをとりにいくか底値を買いに行くかで夏相場へのエントリーの仕方がかなり変わることになりそうです。
為替相場はいつでも難しいものですが、この夏はとくに全体の動きに相当注意をしながら売買することが必要になりそうです。
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