2月10日に実施された米国下院でのイエレン議長の証言は、当初可もなく不可もなく通過するものと見られていましたが、個別議員ひとりひとりとの総計3時間に及ぶやり取りの中で、利上げも利下げもありうるといった不確実性の高い発言を金融市場は嫌気し、建国記念の日でお休みだった東京市場では投機筋がここぞとばかりドル円を売り浴びせ、ロンドンタイムは111円台を瞬間で割込むといった下落を加速させることになってしまいました。
株も為替も単に一時的に下押ししているというレベルでは説明がつかないほどの下落を続けており、特にドル円は明らかにトレンドが変化していることを示すチャートがいくつも登場しています。
ここ2年間ずっと下値を逆張りで買えばそれなりに儲かった官製相場に慣れきってしまった個人投資家は今も底値で買い向かう姿勢を見せていますが、相場は市場の予測を超えるスピードで下落しており、これまでの売買手法や姿勢では歯が立たなくなりはじめています。
個人投資家はこの時期にこれまでの投資行動にはこだわらずに新たに市場にマッチした投資方法を導入するべき時期がやってきているといえます。
今回はそれについてご説明していきたいと思います。
明確に方向性を示さないイエレン発言に市場は嫌気して株も為替も大幅な売りに
イエレン議長の米国議会証言にこれだけ注目が集まるというのも異常事態といえますが、1日目3時間に及んだ個別議員との5分程度の質疑応答はリアルタイムでテレビ中継され、すべてが顔に出やすいイエレン議長の言質をとられまいとする曖昧な発言は金融市場の嫌気を最大限に誘うこととなりました。
初日の議会証言後の米国ダウは案の定下落して終わり、翌11日休日となった東京タイムでは投機筋のやり放題でドル円はあれよあれよと2円近く下落し、ロンドンタイムにはさらに押し込まれて111円台を瞬間に割るところまで下値を試す事態となりました。
何度かショートカバーもでていますが、113円までは戻ることもなく、単にパニック的な売りではすまない市場の強烈なセンチメントが示現しはじめていることを強く感じさせられます。
中央銀行が主導してきた不自然な株価高値維持政策がいよいよ破綻的状況になってきているとも見え、大きく崩壊状態にある債券市場を見ると、実は中央銀行バブルははじけ、今はゆっくりとした下落の局面にいるだけなのかもしれないとさえ思わせる相場の動きが展開しています。
国内は12日オプションSQに向けたヘッジファンドによる下げ仕掛けとの見方も
2月11日の祝日が絡んだ今回の下落は12日の東証のオプションSQのために投機筋が売り仕掛けをしてオプションで利益を出すための動きだったのではないかという指摘もでてきています。
たしかに1万6000円から上でプットのオプションを買っておけば難なく700円~800円抜けたわけで、これにレバレッジがかかれば1億のコストで数十億の利益、しかもそれが休日をはさんでいくらでも下押しできたドル円により、あらかじめヘッジで円買いしておいて手に入るわけですからこんなにおいしい投資法はないわけです。
ただ、こうした動きが事実だとしても、株と為替の下落の動きは単なる下押し仕掛けと理解するわけにはいかないほど世界的な動きになってきており、これがまた簡単に元に戻ると期待するのにはいささか無理があるように思われます。
ドル円20ヶ月移動平均線は完全に割込む形に
米系のファンド勢も非常に気にしてきたドル円の20ヶ月移動平均線は、日銀のマイナス金利を受けて1月末に陽線引けしたことから、かろうじてこの平均線を割込むことはなく終える形となりましたが、2月に入ってからの度重なる下落と足元で111円台も割込む勢いの相場状況で、完全に下抜けして戻らない状況に陥っています。
つまりドル円は一時的な下落で戻りを試すのではなく、大きく下落方向に舵をきってしまったことをしっかり受け止める必要がでてきているのです。
11日の東京タイムは本邦勢不在となったことから難なくドル円は2円以上の下落を示現してしまいましたが、こうした流れのなかでオシレータ系のチャートを見ながら底値で買い向かった場合、よほどのスキャルピングでないかぎり毎回底抜けしてストップロスをつけていてもそれなりの損失を加算する結果となってしまっている個人投資家は多いものと思われます。
しっかりとした戻り売りはワークしますが、レベル感での買いの逆張りはその都度投げを伴うことになってしまい、精神的にも非常に疲れる取引となっています。
一旦逆張り手法から順張りに切り替えることも必要
直近のドル円一分足を見ても、確かに止まったところですかさずスキャルピングをすれば細かくは取れる動きにはなっていますが、下落サイドの動きにほうは時間と幅で考えてもはるかにとりやすくトレンド方向に売買をすることがこうした下落局面では大きく利益を確保できることがわかります。
こうした相場で勝ち残り、しかも利益を確保するためには、トレンドフォローに発想を切り替えることが重要になるのです。
ここ2年ほど続いた官製相場による価格調整のない相場状況はレンジを形成したことから底値で買って適当なところで売ってはまた底で買うというディールでかなり成功した投資家を増やすこととなり、ドル円もせいぜい一日80銭程度の値幅であったことからまともにストップロスなどを置かなくても、この売買習慣が確実な利益をもたらしてくれたのは間違いありませんが、今や昨年と同じこうした手法で売買するのは非常に危険な状況となってきているのです。
トレンドフォローでいけば相場が跳ねたら丁寧に戻り売りをして準備をしておくということも重要です。
この場合は便宜上逆張りではありますが、トレンドがでているかぎり上値に戻ったところで売りを入れておくのは広義の意味ではトレンドフォローということになります。
エリオット波動でもドル円105円程度はおかしくない動きに
昨年末段階ではドル円が2016年に105円方向に下落すると聞いても俄かには信用できない状況でしたが、フィボナッチを利用したエリオット波動が政治的、人為的な情報を除いても105円方向にドル円が向かうとしているのは、妙に真実味がでてきているのが足元の状況です。
果たしてここまで突っ込むことになるかは神のみぞ知る話ですが、少なくとも2015年6月につけた125.80円レベルは間違いなくピークであり、ドル円が一定期間ワークする下落トレンドに入ってしまったことはどうやら間違いないようです。
また米国が3月の利上げを行わないことが明確になってくれば、ドルは下落局面に入ることになり、仮に日銀が3月末の企業決算の改善を目論んで3月に量的金融緩和の追加策を打ち出したとしても、もはや118円台ぐらいまで相場が戻るのもかなり厳しい状況になりそうです。
まとめとして
これだけ大きなボラティリティ相場ですから突っ込み売りをすれば瞬間的に様々な事情から踏みあげられる局面に陥ることも多いかと思いますが、当分は上に戻したらストップをおいて丁寧に売ってみて、利益がとれたらまた戻りを待つという、原始的な売買方法が意外にワークしそうな状況となってきています。
くれぐれも落ちてくるナイフを素手で捕まえるような取引は桜が咲くころまでは禁物といえそうです。
特定のだれかの仕掛けだけでは説明がつかないのが直近の相場状況ですし、これまでは中国な主たる原因として説明に使われてきましたが、春節の最中でもこの調子であることは、別のところに原因があることを明確に示現しているともいえるのです。
ほどなくして日はまた昇るを考えるのはかなり危険です。

いつも素晴らしい相場分析と世界経済動向の考察の記事をありがとうございます。大変勉強になり、ポジの参考にさせていただいています。
コメントありがとうございます。
また、参考にしていただき嬉しく思います。今後とも宜しくお願い致します。