早いもので今年も名実ともに折り返し地点がやってきました。米国の利上げを受けて明確に方向感が出るかと思われた相場はその後もほとんど利上げの影響と思われる動きがなく、非常にわかりにくい展開が継続中ですが、いよいよ7月には米国の株式市場に調整的側面が出る可能性が高まっており、ここからは米国株価の動向に相当な注意が必要になってきそうです。
またそれとともに先進主要国中央銀行総裁の金融引き締めに関連する発言にも大きな注目が集まりそうな気配です。
いよいよ調整の気配を見せてきた米国NYダウとNASDAQ

6月29日のNY市場では特段大きな材料がないのにも関わらず、NYダウとNASDAQが大きく下落調整をはじめ、NASDAQは2%を超える下落となりましたが、引け値にかけて一旦は値を戻す状況となっています。
30日以降の米国株式市場がさらにどう動くことになるのかが非常に注目されるところですが、NASDAQを除いてはほとんど調整らしい調整も見せてこなかった米国の株式市場だけに下落が進めば必要以上の投げ売りが登場することも考えられ、ここからは株価の動向に十分な注意が必要になってきています。
実際29日も債券金利がほとんど下がらなかったにもかかわらずドル円は大きく調整することとなり、ロンドンタイムにつけた113円台手前から1円10銭近い下落を示現し、市場参加者は相当ロングの投げを強いられたことがわかります。
やはり株価の崩れは明確に為替にも影響がでることになりますから、ドル円は米国の今後の株価次第ということになりそうです。
暴落のような深刻な事態が起きるのは依然として8月以降か

株価は2008年のリーマンショックから丸9年近くも上昇を続けている相場だけに想像を超えた暴落が気になるところですが、まだ下値では買いに回る向きが残っているところを見ますと、大きな下落が出るのは7月ではなく8月以降になる可能性も考えておく必要があります。
あまり突っ込み売りをしてしまうと捕まるリスクがあるということです。
こればかりは実際に相場が下落してみないと判断できないものでもありますが、比較的下げ幅の大きな調整はあると考えておくのがいいのではないでしょうか。
日経平均のほうは、投資主体別売買動向を見るともはや日銀以外買い手がいない状況であるためそれほど大きな下落はないのかもしれませんが、売られるときには米国株価と一緒に値を下げることになりますから、これだけとってもドル円は上値を抑えられることが予想されます。
とにかく株式市場は底値を探るのは比較的難しくないものの、下落のタイミングを正確に当てるのはかなり難しいものがあります。
また足元のように妙に市場全体が楽観視しているときには暴落といった事態をまったく意識していないため、オプションの設定やヘッジ策の履行なども行われていないことが多いですし、一旦下落がはじまるとパニック相場になることが想定されます。
こうなると多くの市場参加者が必要以上に投げを行うといった特別な行動に出ることもあることから、下落幅も予想以上に広がり、ダメージが大きくなることは必至です。
ドル円は105円レベルで一旦止まることが予想されますが、オーバーシュート気味に展開すれば103円から100円に近いところまで一気に下げるといったあまり考えたくない事態に追い込まれることもあるという点はあらかじめ覚悟しておかなくてはなりません。
各国中央銀行総裁の金融引き締め発言も要注意

FOMCでの利上げにはどうもほとんど市場が反応しないままの状態でしたが、6月27日にECBドラギ総裁が「デフレ圧力はリフレ圧力に変わった」との含みのある発言を会合の挨拶で述べたことからユーロは急上昇となりました。
また欧州の債券市場はドラギ発言を受けて下落を強めることとなり、国内の債券市場にも売り圧力がかかる事態にも波及しています。
ただ翌日にECB関係筋の発言として「市場は27日のドラギECB総裁の発言を誤解している」という報道が飛び出すと一点暴落となり、その後BOEのカーニー総裁の発言で再度上昇し、下落前の価格を上回る上昇になるなどかなりの乱高下が続いています。
FRBの金融引き締めにはほとんど反応を見せなかった市場ですが、さすがにECBの金融緩和の見直しと本格的な出口戦略の履行に関しては、相当神経質になっていることがよくわかります。
これまで米国FRBの金融緩和終了をECBと日銀が緩和を肩代わりすることで、その影響を最大限に食い止めてきたのが実情であるだけに、ECBの緩和終了が明確になりますと株式相場と債券相場にはかなりの影響がでそうな状況になってきています。
下手をすれば相場の大幅下落にもつながりかねない問題だけに、ここからも各国中央銀行の要人発言に相当な注意が必要です。足元ではユーロドルが猛烈な上昇を示現しており、すでに6月30日の段階で ユーロドルは1.14452まで上昇する動きになっています。
※ユーロドル1時間足
さすがに足元の材料だけでここまであがるのはやり過ぎ感満載ですが、ドルに比べてユーロはこうしたECBの政策にものすごく敏感な動きをするだけにここからの相場の動きにはかなり注意が必要になりそうです。
ぶれまくるBOEカーニー総裁発言も要注意の状況に
※http://jp.wsj.com/articles/SB12751571096197434046704581519733843897362から引用
中央銀行総裁発言としてはBOEカーニー総裁のぶれまくる発言にも厳重な注意が必要になってきています。
6月20には英国の利上げは時期尚早と発言したばかりのカーニー総裁は、一週間もしないうちに英国経済がフル稼働の状態に近づくにつれ、BOEには利上げが必要になる可能性が高いと指摘し、さらに具体的に「向こう数カ月以内に」BOEは利上げを議論することになるとまで述べた。
完全に前言を撤回する内容となってしまい、これを受けた相場はポンドが急激に上昇することとなり、直前にECB関係者発言で「市場は27日のドラギECB総裁の発言を誤解している」という報道から大幅下落したユーロ相場がいきなり引きずられて反転上昇するという猛烈な状況が示現することとなりました。
カーニー総裁はいまや為替相場の乱高下の元凶となってしまっており、ここからの発言にも非常に注意が必要になりそうな状況です。
為替相場は次なる材料となるネタに異常に敏感な状態
米国FRBの政策決定にはほとんど株も債券の市場もなんら反応を示さなかっただけに市場はお構いなしにつき進んでいるかのように見えましたが、ドラギ総裁の発言やカーニー総裁の発言への過剰とも思われる反応は決して材料を無視しているわけではなく、むしろ新たな材料に呈してはかなり敏感な動きをすることが改めて認識された状況です。
7月は例年為替も取引ボリュームが非常に減ることから膠着相場になるか、ちょっとした材料で大きく動くかの二つの相場が考えられますが、やはり内容次第では大きく動いてしまう相場状況に注意が必要になりそうです。
また冒頭に触れましたようにいつ下落してもおかしくない米国の株式市場がどのような動きを見せるのかは非常に注目度の高い材料であり、7のつく年のアノマリーや米国大統領が交代した年の6月以降の相場の大幅下落、さらに民主党から共和党に政権が交代したときの下落幅が非常に大きなものになるといったアノマリーが今回も現実のものとなった場合、想像以上に為替も大きな下落に見舞われるリスクはつねに意識しておく必要がありそうです。
怖がってばかりいてはトレードにはならないのもまた事実ですが、常に用心しておく心がけが重要になりそうです。
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