日米首脳会談よりも米中通商問題が為替相場を左右する

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為替市場では日米首脳会談が大きく注目され、狭いレンジの中で動きの止まってしまったドル円でしたが、対米貿易赤字の解消という点では米国と日本の首脳会談による通商交渉などはほんの前座の段階であり、米国がここから直面する厳しい交渉となるのは米中通商問題に他ならない状況です。

トランプが大統領に決定してからというもの日に日に中国との関係は悪化し続けていますが、すでに1つの中国と崩し台湾との電話会談を実施して中国の逆鱗に触れていますし、春節(中国の正月)を前にして祝電を送るといってこれまでの慣例も今年は実は行っていなかったようで、中国からは不満の声もでていたようです。

ホワイトハウスによると、トランプ大統領は自らの大統領就任時に就任を祝う書簡を習主席から受け取っていたものの、ようやく春節明けの8日にこれに感謝する書簡を送ったそうで、書簡の中では「米中両国に利益となる建設的な関係発展のために、習主席と協力することを楽しみにしている」などと今後の厳しい交渉とは裏腹なことが書いてあったそうです。

習近平は比較的冷静に対処しており、今のところは沈黙を守り続けていますが、この両国の通商問題をめぐる激突は、実は日米関係により示現する政治状況よりもはるかにドル円に与える影響が大きくなるものと思われ、人民元の動きこそがドル円の円高を招きかねない状況になってきています。

今回はそんな米中通商問題の行方に関してまとめてみることにします。

トランプは対中戦略の急先鋒ピーター・ナヴァロを指名

トランプ大統領は今回の政権の国家通商会議トップにカリフォルニア大学の教授であるピーター・ナヴァロを指名しており、また商務長官には投資家のウィルバーロスを起用しています。

この2人、実はトランプ抜きでもかなり強固に繋がった存在であり、昨年の大統領選挙を前に共同で発表したレポートでは強硬な貿易政策の実現で歳入の増分まで試算しています。つまり、貿易赤字を徹底的に追求することで歳入を増やし、それを減税の原資に充てようとしていることが見えてくるのです。

ピーター・ナヴァロは対中強硬派としても知られる人物で、「米中もし戦えば 戦争の地政学」の出版でも話題の人物として知られています。

米中もし戦わば

出版社: 文藝春秋

ページ数: 412ページ

発売日: 2016/11/29

内容は日本人にとってはかなり強烈な内容で、南シナ海や尖閣諸島を囲む第一列島線の内側の制海権を中国は握りつつあり、さらに過去の派遣戦争を振り返った場合、米中戦争が起きる可能性が非常に高いという見解を示しているわけですから、穏やかではありません。

今回アメリカが抱える貿易赤字の解消をテコにして税収を増やしてやろうという戦略はこの人物が考えているわけですから、一体中国とどのように接することになるのかが非常に興味のあるところです。

トランプの就任直後から台湾の蔡英文総統と電話会談したのも、中国からの製品に45%の関税をかけるなどと口走っているのもナヴァロが糸を引いているとすればかなりシビアな対立が米中間で起きることは覚悟しておかなくてはならなさそうな状況です。

対ドル人民元レートは依然ドル高に

2015年8月に中国がいきなり人民元の切り下げを行い、株も為替も暴落したのは記憶に新しいところですが、実は足もとの人民元の相場レートはそのときよりもはるかにドル高、円高になっており猛烈に人民元安が進んでいることがわかります。

年明けからは中国からの資本流出を止める目的もあってか一旦人民元高の方向に動いていますが、中国当局もなかなか苦しい立場にあることはこの人民元のチャートの推移を見ていますと状況が推測することができます。

※USDCNY推移 出展Bloomberg

中国は一定の変動性を伴うといっても依然としてドルに連動するペッグ制をとっていますからドル高が進行すれば円やユーロなど他の主要通貨に対しても人民元高が示現することから、競争力を失うことを回避するために国の金融当局が円安誘導を行う傾向がかなり強くなっています。

これを米国が無理やり止めようとして中国製品に45%の関税をかけるような脅かしをエスカレートした場合、中国はさらに向きになって人民元高に動くことになる可能性もあります。

この場合ドル円が人民元のために大きく円高に振れてしまうといった不測の事態も考えられ、実は人民元レートの問題は為替では非常に大きな影響を市場に与えかねない材料になりつつあることがわかります。

米国からの通商関連での過剰な圧力への対抗上いきなり中国が人民元の切り下げを行った場合には、株も為替も2015年8月の比ではない影響を受けるリスクがあることは認識しておかなくてはなりません。

表面的には対立してもあっさり政治的決着がつく可能性も

米国政府はピーター・ナヴァロを中心として減税の原資をこの貿易赤字関連解消から引き出したいと画策しているようですから、話はかなり厄介ですが、人民元安を政治的に容認する代わりにAIIB(アジアインフラ投資銀行)に米国が出資して主導権を確保するといった市場が予想もしないような驚くべき取引が行われる可能性についても否定はできません。

この場合はドル円も極度の円高が示現する可能性は低くなり、一定の円安が維持されることも期待できることになります。

トランプ政権の場合、実際の政治的なディールの実績がないだけにどのようなアプローチをし、どこに落としどころを探ることになるのかはまったくよく判らない状況ですが、トランプも商売人として名をはせて来た存在ですから、ただ単に関係を悪化させてしまい交渉たち切れにしてしまうよりは、なんらかの妥協点と落としどころを探る可能性も十分に考えられることから迂闊な予想はできない状況にあります。

米中のせめぎ合いに巻き込まれると円高のリスクも高くなる

対ドルにおける円安は中国人民元でも元安につながる可能性が高くなることから、米国が円安にさらに神経質になるリスクも高まることになります。

つまり円高誘導することが元高にもつながることになるわけですからここからの円の動きには余分な材料がこれまで以上に大きな影響を与えることになりそうです。

今年4月には米国から為替報告書がまた発表されますが、ここで正式に中国が為替操作国に認定されるような事態になりますとかなり市場も緊張した場面と迎えることになりそうです。

為替市場では年初、正月早々につけた118.600円弱がドル円の最高値だったのかもしれないといった憶測もではじめていますが、昨年でほぼ21円程度、一昨年で10円強の年間値幅をともなって推移したドル円は昨年同様の値幅を示現するとすれば100円以下の下値の可能性も十分にありますし、10円といったかなり狭い動きに終始しても108円レベルまでの下落は簡単に起きることを考えておかなくてはなりません。

トランプ政権のスタートで当初は上昇方向に動く第二幕が簡単にやってくることを期待しましたが、どうやらこの相場はそれほど簡単なものではないようで、とくにトランプのトランプ交渉術がどのような形で中国との対話にワークしていくか次第では大幅に結果の異なる相場になってしまいそうです。

為替市場はいつでも簡単な相場展開というものはありませんが、今年は想像以上にむずかしい動きが継続しそうで相当な注意が必要になりそうです。

くれぐれも一方的な期待や思い込みだけでポジションを取ることのないように気をつけたいものです。


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