2016年夏、米国の利上げはあるのか?

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2016060901

依然として為替市場では米国の利上げ時期が相場に大きな影響を与え続けています。
確かに他の先進国に比べればかなり経済状況はいい米国ではありますが、本当に何の問題もなく追加利上げを実現できる状況にあるのでしょうか?

今回はこの点について検証してみることにしたいと思います。

5月の雇用統計結果でいきなり崩れた6~7月の利上げ説

6月3日に発表された5月の米国雇用統計は、失業率こそ労働参加率の低下により下落したものの、肝心のNFPは市場の予想を大きく下回る3.8万人という脅威的に悪化した数字を示現しました。

過去2ヶ月の数字も修正した上でのこの数字ですから、事前から言われていたベライゾンのストライキだけでは説明がつかない内容であることは事実ですが、その一方でこの雇用統計の調査のあり方から来る問題も指摘されています。

非農業者部門雇用者数、いわゆるNFPは非農業者部門に属する事業所40万社に所属する約4700万人を対象として給与支払帳簿をもとにして集計しています。

これは全米の事業所3割程度を網羅するボリュームとなっており、カバー率こそ高いものの、全米の事業所に一斉に調査票を郵便で送付して、翌月までに返送された結果だけを利用して速報値を算出するという方法論をとっていることから、遅延した調査結果は翌月以降にカウントされることになるため、事後の変動が大きくなると言われているのです。これが、多くの金融機関の一流アナリストをもってしても毎回数字予測がまったく当たらない大きな原因となっているのです。

また40万社のうち非常に雇用に積極的な企業が率先して回答してきてしまった場合、それをベースにして速報予測を行ってしまうため速報値の数字だけがよくなることも考えられ、プラスにもマイナスにもブレがでることにもなるのです。
したがって5月単月と過去2ヶ月の確報値の修正だけでは現実に米国の雇用に変化がきたしているのかどうかを語れるものではないといえます。逆にこうした調査だけで雇用情勢を語ること自体が問題という指摘も出てきています。

また、最近の雇用統計では既に完全雇用に近い5%以下の失業率が毎回発表されていますが、この失業率の調査については、毎月12日を含む週における状況を調査しており、全米の約6万世帯を調査対象として失業者数を推定しているものとなります。これは前述のNFPとは全く別個の対象に対して行っている調査であり、一定期間に仕事を探すことをやめてしまった人間は失業者からカウントされないことも大きな問題になっているのです。

日本でいう所のアルバイトのような単価の安い仕事なら選り好みしなければなんとか見つかるものの、いわゆるパーマネントで高い単価の仕事は依然として限定的なのが雇用状況の現状となっているわけで、決して国民的に満足がはかられているわけではないという指摘も強くなっています。

こうして見ると雇用統計の結果は利上げ判断にはつながり難い部分があることがわかります。

利上げ早期実施のためにFRBが行った5月のキャンペーン

5月、FRBメンバーの地区連銀総裁は挙って6月利上げの可能性を煽る発言を市場で積極的に行っています。CMEが公表しているフェデラルファンドレート先物推移によると5月中旬段階ではたった4%の確率しか示現していなかったため、なんとか70%近い利上げ確定水準に近づけるためにFRB自身が6月利上げを示唆してこの確率を上げるキャンペーンを5月に積極的に行った可能性が高くなってきています。

実際に上げるかどうかは別としてもこうした積極姿勢を市場にアピールすることで実際にいつでも上げられる地ならしを行ったのはほぼ間違いなく、5月末のイエレン議長のハーバード大学の講演でもこうしたことが背景で、それに準じる発言が飛び出すことになったものと思われます。

ただ、NFP発表直後の6日にフィラデルフィアで実施したイエレン議長の講演ではかなり慎重な発言が多く聞かれることとなり、およそ6月には利上げできる状況にないことが市場に周知されることとなりCMEのFedWatchの確率はまたしても大幅に下落することとなっています。6月8日現在の数字は1.8%足らずにまで下落しており、市場のコンセンサスは6月利上げなしとなっていることは明確です。また7月の利上げ確率も24.8%に下落しており、この夏に米国が利上げする可能性は低いと市場が明確に判断していることが理解できます。

※CME FedWatch as of 6/8
2016060902

ドル円のショート一気に買い戻しで111円台中盤まで上昇

FRBが行った利上げ示唆のキャンペーンに最も反応したのは年初以来ドル円を円ロングで買い持ちしてきたヘッジファンドなどの投機筋で、FRB各連銀総裁やイエレン議長の発言を聞いて短期間に急激にドル円のショートを解消する動きにでることとなり、ドル円相場は一気に111円40銭レベルまで巻き戻ることとなりました。結局ドル円は買い上げられたのではなくショートのポジション解消が一気に進んだことで相場が持ち上げられだけだったことが今になってはっきりわかります。

したがって一定のショートカバーがでればそれ以上は上げる余地も無く、逆にショートが軽くなった分、6月3日の雇用統計の結果を受けて一気にまた売られる形でオーバーシュート気味に106円台中盤まで下落を加速させてしまうこととなりました。

為替相場だけ見ていますとかなり上下に振らされる状況となっていますが、こんな理由が背景にあって動いていることを確認することができます。

製造業景況感は依然低迷中

さて、米国の足もとの経済指標を確認してみますと、強弱が混在する状況になってきていることがわかります。

まず、自動車販売はサブプライムローンが功を奏して依然好調をキープしていますし、住宅販売も堅調さを保っています。また冬場に停滞していた個人消費も4月以降改善傾向にあり、雇用もその質さえ問わなければ上述のように一定の改善がはかられていることは事実です。

しかしながら製造業関連ではニューヨーク連銀の製造業景況指数もフィラデルフィア連銀製造業景況指数も軒並み悪化しており、決して勢いが回復していないことを明確に示唆する状況となっています。ISM製造業景況指数についても全体数字はよくなっているものの、生産や新規受注は依然として弱含みであり、この夏が満を持して追加利上げを行える状況にはないことは明らかです。

FRBが政策手段として利下げができるように一刻も早くできるときに少しでも利上げしておきたいという事情は非常によくわかりますが、6月や7月がそのために適切なタイミングであるとはなかなかいえないのが実情なのです。

※ISM製造業景況指数推移
2016060903

PCEコアデフレーターも目標には遠い

日本でも名目物価2%の達成を謳って日銀は緩和措置を行っていますが、米国もPCEコアデフレーター2%の達成は必ずしもうまく言っておらず、前年日1.6%までは来たものの2%には依然として及ばない状況です。

経済のグローバル化が進む中にあってはよほどの新興国でない限りデフレ圧力は各国に均等にかかってきており、米国だけの経済状況が一国だけ改善する状況にはなり難いことがわかる状況です。

※ PCEコアデフレーター推移
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今無理して利上げすればリスクオフに逆戻り

市場では、FRBは結局のところ米国の株価を見ながら利上げを検討しているのではないかという説がまことしやかに出回りつつあります。

一説では、5月20日につけたS&Pの2134を超えてくれば本格的に利上げに踏み切るといった予想も出回り始めていますが、米国株はこれでなんとなるとしても新興国経済は米国の利上げが後ずれしてきていることで平静を保っている部分が多く、特にドル建てで債券を発行している国は米国の利上げの影響をもろに受けることとなることから、利上げは昨年の年末以降の相場の動き同様、大幅なリスクオフになる可能性が極めて高くなるといえます。

また北京で開催された米中戦略対話の席上、米国はFOMCでの利上げについては可能な限り予測可能にすると中国に約束をしており、より市場のコンセンサスを事前に形成することが求められるようになっています。

23日に迫った英国のEU離脱をかけた国民投票の結果も依然不透明な状況となってきていますから、総合的に判断して少なくとも6月利上げは全くなくなっており、7月も現状で見る限りその可能性は限りなくゼロに近い状況になってきているといえそうです。

為替の視点で見た場合にはFRB関連でこの夏ドルの上昇要因はほとんどないことが鮮明になってきているといえます。ECBや日銀は依然として政策決定で市場にサプライズを与えることを重視していますが、FRBはより市場のコンセンサスを重視しながら政策を決定していく動きをとっており、今の市場の織込み具合を見る限りは簡単にこの夏利上げをできそうな状況にはないと思われます。


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