日銀は果たして本当に金融緩和をやるつもりがあるのか?

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9月17日の米国FOMCにおけるFRBの利上げ先送り以降、米国で発表された経済指標は必ずしも芳しい結果が現れなくなっており、とくに10月2日に発表となった雇用統計は市場予想を大幅に下回った上に、前月のデータまで下方修正することとなったため決定的な利上げ後ずれ要因とみなされるようになってしまいました。

シカゴCMEが行っているFedウオッチのデータでは、すでに10月のFOMCでの利上げ確率は4.6%にまで落ち込んでおり、ややもすれば年内の利上げすら危ない状況になってきていることから、今月の市場の関心は月末のFOMCよりもECBの追加緩和と日銀の追加緩和に集まるようになってきている状況です。

投機筋も12月までは少なくとも米国の利上げはないとみて、多くの金融相場で売り込まれた通貨を買い戻す動きに出ていますし、NYダウもかなりの戻りを示現することとなりました。

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1.追加緩和は口にしても簡単には実現できないECB

ここのところ、フォルクスワーゲンの問題や中国の景気減速などを含めて、これまで緩和措置に積極的ではなかったドイツからも追加緩和期待の声があがるようになっています。
毎回ドラギマジックで口先だけの緩和を匂わせる発言を繰り返すことにより、ECB理事会後の記者会見でユーロは大きく下落する局面を迎えることが多かったのですが、直近の相場状況はドルの利上げ後退が鮮明になってきていることから、明らかにユーロが戻りを試す展開となっており、現状でも買い付ける国債などが十分ではないECBにとっては、これ以上の追加緩和を行うのはかなり難しい状況の中で、どこまでドラギ総裁が口先だけで次回のECB理事会後のマーケットを調整できるのかも注目されはじめています。

ノボトニーオーストリア中銀総裁は、先週もしきりにECBの追加緩和の必要性に言及していますが、じつはこの点ではドラギ総裁とは必ずしも方向性を同じくしておらず、次回のECB理事会後の記者会見で、ドラギ総裁が追加緩和に積極的な発言をしなければ大きなユーロの買い戻りにつながる可能性もあり予断を許さない状況です。

2.ETF買い付け資金の枯渇した日銀の追加緩和にも市場は強い関心継続中

一方、ETFの買付資金が今年10月14日時点で残り5000億弱になったことから、少なくともETFの買い付け増額だけでも日銀が追加緩和するのではないかという期待が海外短期筋を中心に依然として高まりを見せています。
まあ、一部はイベントドリブン系のファンドによる仕掛けのようですから、買い上げて大きく売り込むつもりなのかもしれませんが、ドル円も日経平均も妙に底から価格を回復させる動きとなってきています。

既に、国債は日銀が全体の30%を保有するようになっており、これ以上買い付けは不可能かつほとんど意味がないというのが市場の見方となっております。

また、あからさまな株価維持政策にしか見えないETFの買い付け増枠だけをこの時期に本当にするのかどうかについても、かなり市場の意見の分かれるところとなっています。

しかも、付利の撤廃に関しては黒田総裁自ら前回の記者会見で強く否定している経緯もありますから、今できる緩和措置がいったい何になるのかは非常に微妙な状況であり、ドル円119円から120円レベル、日経平均1万8,000円水準で本当に追加緩和が必要なのかどういかということを冷静に考えて見ますと、今回あえてこの時期に追加緩和する可能性は相当低いといわざるを得ない状況です。

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3.日銀は結局2%の物価目標より金利の上昇を抑えることが最大の目標か?

名目物価2%の上昇が大義名分となっている日銀の金融緩和ですが、実際には国債の金利を上げないことが陰の最大の目標となっていることは間違いないようで、ある意味で2%が達成したいことは、緩和を継続できるため実はかなり都合のいい状況になっていると見る向きも多いのが現状です。

財務省によると、仮に2016年度以降に長期金利が想定よりも2%上昇した場合、国債費は同年度に2兆円、17年度に4.8兆円、18年度に8兆円も増加すると想定されています。
これは、消費増税3%分が吹き飛ぶ計算であり、消費税率引き上げの効果を得るためにも金利を上げられないのが前提となっていることはほぼ間違いない状況といえます。
日銀によると金利が全年限にわたって1%上昇した場合、金融機関の保有国債に7.5兆円の含み損が発生するとされています。

政府部内では、2020年度のPB黒字化を実現するには、長期金利の低位安定が不可欠の条件であり、日銀の量的・質的金融緩和の継続が暗黙の前提になっているとの声が聞かれるようになっているわけです。
最後は、日銀が気にするのは株価ではなく国債金利というのが市場の見方になりつつあり、政権は参議院選挙のために株価維持を大きく掲げたいのでしょうが、日銀がそうしていた政治的な目標に今回協力してくることになるのかどうかも大きな注目点となりつつあります。

4.30日に万が一、日銀の追加緩和があっても噂で買い上げた層が事実売りする危険も

昨年10月末の追加緩和は市場のほとんどが想定していなかっただけに、発表直後から相場は大きく動く本格的なサプライズとなり、ほぼ2ヶ月以上緩和の効果が持続し、株も為替も大きく上昇したのは記憶に新しいところですが、今回については、大方の市場関係者は金融緩和の可能性があることを十分に知っていることから、万が一30日に追加緩和が行われても、本当にドル円が上昇するのかを疑問視する声も市場では聞かれ始めています。

いわゆる、Sell on Factの状況で、事前にある程度買い上げてしまっていて、これ以上の緩和措置がないとなれば、少なくともドル円は事実売りから円高方向に売り込まれる可能性についても注意しておく必要がありそうです。
当然のことながら、何も追加緩和がなければ一定の失望売りイベントドリブンの売り向かいにあうことが予想されますので、どちらに転んでも下押しの可能性を考えておく必要はありそうです。

現状で118円近辺を大きく買い支えているのは、日本の個人投資家であると言われており、118円を割り込むとほぼ同じ水準でこうした個人投資家のストップロスがでることが予想されるため、下げ始めると結構大きな下げになるという見方もではじめています。

116円まではこれといったしっかりしたサポートラインもなく、さらにその下となれば113円レベルまで落ちることも想定範囲内になっている点が気になるところです。

5.IMMのポジションは大幅に円売りが減少中

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投機筋の動きを占う上で有益とされている米商品先物取引委員会(CFTC)が16日に発表した10月13日時点の建玉報告によれば、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門、つまり投機筋の円の対米ドル持ち高(ドル円のロング)は売りと買いの差し引きで1万3,832枚の売り越しとなっており、前回の1万7,599枚の売り越しからさらに3,767枚減少しています。

ただ、この動きはドル買いをやめて円買いをしているというよりはドルの買い持ちを投機筋が大幅に減らし、ドル円ではポジションをもっていないことが覗い知れます。

これは、2013年にアベノミクスがスタートしてから初の状況ともいえるもので、こうした状況では上方向でも下方向でも動きに合わせて投機筋が相場についていく可能性が高いことを示唆しているといえます。
投機筋のドル円買い持ちが少ないために、ドル円が下落しても投げがでないことも大幅下落につながらないひとつの原因となっているようですが、118円を割れた場合には大きく売り込まれる可能性が高いため、下方向は依然注意が必要です。

全体的に見て、上方向に大きく動く材料がかなり枯渇しつつあることだけは間違いなく、下落のリスクのほうが高まっているだけに何が材料でさらなる下押しになるのかが最大の問題といえそうです。

果たして、日銀の30日の会合がそれでも相場を引き上げる方向に動くのかどうかまったくわからない状態ですが、上方向も下方向も両方想定しておいて間違いはなさそうな状況といえます。


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