徐々に見え始めてきたトランプ次期政権で出来る事と出来ない事

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来年1月20日の就任を前にトランプ政権では閣僚人事がはじまっており、長らく無言を貫き通してきたご本人もツイッターで様々なことを言い始めており、本格的な政権のスタートを前にして徐々にトランプが公約どおりできることとできないことが見え始めています。

ゴールドマンサックス政権とも思える顔ぶれ

今回のトランプ政権の閣僚はまだ全て決まったわけではありませんが、実業界からの参入者も多いのが特徴といえます。

特にゴールドマンサックス(GS)経験者がすでに3名も閣僚入りしている点は大きな注目点となっています。まず財務長官のムニューチンはGS出身であり、デューンキャピタルのCEO経験もある人物で映画製作会社も創設しており、ダイハード4.0やバットマンVSスーパーマンなどを製作したことでも有名な存在となっています。

GSでは幹部とはいえ大きな実績を残しているわけではなく未知数的な存在といえ、どちらかといえばトランプの言うことを忠実に聞く存在なのではないかと囁かれています。

OMB・行政管理予算局の局長はやはりGSのゲーリーコーンで、予算教書作成から、予算執行、各行政機関の活動を管理する機能を持っていますが、この局長は閣僚と同格に扱われており大統領直轄の存在となります。その局長に現役ゴールドマンサックスの社長が抜擢されるということですからこちらもかなり異例の人事ということができそうです。

さらに次期政権でチーフストラテジスト間上級顧問となるスティーブンバトンもゴールドマン出身ということで要人に3人ものGS出身者が登用されることが決まっており、ふたを開いてみればクリントンに劣らずウォールストリートとの関係は親密な内閣になりそうな気配です。

減税はある程度実現可能な状況に

トランプが早くから政策として打ち出してきた大型減税についても、多少中身は異なるものの、もともと共和党が試案をもっている減税案を下敷きにして実施することになりそうなので、こちらはかなり実現可能な状況になりそうです。こうした減税策が検討されるようになると下院は減税一色になるため、ほかの内容の決定は後ずれすることになりそうですが、来年この法案が通れば、実施は再来年からとなるため、景気の継続も期待されそうな状況といえます。

また、12年前の2004年にブッシュ政権下で時限立法として成立したHIA/本国投資法の再施行も注目されます。

米国に存在する多国籍企業が海外で得た利益や配当金、余剰金などを国内に還流(レパトリエーション)した場合にその税負担を優遇しようという法律で、この法律が恒常的に施行されれば、税率は35%から10%程度に引き下げられることになるため、かなり米国への資金還流が進むことが期待されます。2005年と同規模のレパトリが実現すれば、日本円にして30兆円程度の還流が期待できますので、その2割が日本円からドルへの転換としても少なくとも6兆円程度がドル転の原資になることが期待でき、かなりドル高円安を支援する材料になることが期待されます。

大型財政支出については議会との調整が必要で短時間にはまとまらない

一方、選挙戦の序盤からトランプが公約として挙げてきた超大型の財政出動については、議会の承認が必要となる内容であることから、こちらは政権がスタートしてからでないとどの程度の実現にこぎつけられるのかはまったく不透明ということになりそうです。

ただ、日本のように過去30年で27回も財政出動しているのと異なり、米国で本格的な財政出動による投資がスタートすれば景気への刺激はかなり大きなものになりますし、なによりインフレを牽引するものとなることから、この部分がどのように決着していくのかは引き続き注目していく必要があります。

おそらく本格的な議論はハネムーン期間が終わってからということになるのではないでしょうか?ということは、来年も中盤以降に形が見えてくるものとなることから、株価などに影響がでるのは現実的にはまだ先の話になりそうです。

通商問題はもっともクリティカル

トランプ政権でもっともクリティカルな領域となりそうなのが通商問題です。すでに国内の有力企業に電話をかけてメキシコへの生産拠点を移動させないようにしたりし始めていますが、国内で完結できる保守主義政策はともかく、中国への挑発などが本格的にはじめることになると話はかなり厄介なことになりそうです。

特に下院議会は減税に本格的に取り組もうとしている中で、通商問題も並行して扱うことになると、金融市場がまずそうした動きに嫌気する可能性が高くなり、トランプ期待も一転して状況が変わるリスクが高まることになります。

特に中国との関係については、すでに台湾との異例の電話会談の実施などかなり中国を刺激するような動きをとり始めていることが気になるところです。この領域は大統領令でできることと議会の承認を得なくてはならないことが混在していますが、トランプ自身は売られた喧嘩はとことん買うタイプのようですので、小競り合いが顕在化してくれば中国サイドからの逆襲を受ける可能性すらあり、この政権の中ではもっと危ない領域ということになりそうです。

ドル高けん制

トランプ政権になってまず最初に飛び出すのがドル高けん制ではないかと思われます。

中国を為替操作国に認定する云々という話も飛び交い始めていますが、こうした認定は大統領だけでは完結できませんので、金も時間もかからないのはまずトランプ自身がドル高をいきなりけん制する発言を行うことが先になるものと思われます。

この場合中国もさることならが口火を切りやすいのは対日本円についてで、これが飛び出すとこれまで青天井のようにドル高円安が進んできたドル円にも大きな変化が現れることになりそうです。

正直なところこうした発言が年内にも飛び出すのか年明け早々か、あるいは就任後かはまったく判りませんが、なぜか今のところ一切トランプもこのことに触れない状況が継続しており、これがドル高を支えているといってもいい状態です。

FRBとの親和性

こうしてみてきますとトランプ政権の政策の実行はインフレを増幅させそうなものが多く、巨大な公共事業を実施はドル高を加速させることになりますから、そのプライオリティが見えてくることによって、株価も債券金利も大きく変化することが予想されます。しかし12月に利上げ実施が確定的となっているFRBのその後の政策とどのレベルで親和性がでてくるのかは全く判らず、むしろFRBがトランプの政策に対応していく動きとならざるを得ないことが予想されます。
金融市場ではイエレンがどのようにトランプの政策に対応した金融政策をとっていくのかに注目が集まりはじめており、高圧経済の看板を一旦おろして金利の引き上げタイミングを早めるようなことになれば、株価にも債券価格にも大きな影響を与えかねない状況です。当座としてはイエレン退任問題の話も影を潜めていますが、はたしてトランプとFRBに親和性が築かれるのかどうかも大きな問題になりそうです。

このように次期トランプ政権でできることとできないことというのは段々と明確になりつつあり、そのプライオリティのつけ方次第でも市場の評価はかなり異なるものになりそうです。

米系ファンドがとにかく年内にNYダウ2万ドルを目指して画策しているのも、実際のトランプ政権のスタート前にひと勝負を終わらせてしまいたいという意識の現れのようで、為替相場でもこうした思惑を裏付けるかのようにドル円は115円台に上伸し、年内に120円すら伺う動きになってきています。

年内までのトランプ相場にはとにかくついていくとしても、年明けからはトランプ政権の具体的な政策を睨んで相場が逆戻りをすることも視野に入れておかなくてはならなくなりそうな微妙な状況が迫ってきているようです。


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