中国リスクよりもオイルマネーの逆流に注意

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2016年1月13日、6日続落した日経平均はやっと7営業日ぶりに大幅上昇となりドル円も118.30円台にまで回復し、一服感を味わうことができましたが、1月14日の東京市場は前日のニューヨーク市場の下落を受けてまたしても大幅下落に直面することとなってしまいました。

下落の起因となるファクターは前週とまったく変わりませんが、実態がわからないだけに常に不安感が払拭できずに潜在的なリスクとなっている中国の株式市場や人民元の動きとは別に、確実に日経平均に大きなダメージを与え始めているのものがいよいよ示現してきています。

それがオイルマネーの逆流です。

1月最初の週はとにかく下落が加速し、何がその大きな要因となっているのかよくわからない状態が続きましたが、徐々にその中身がわかるようになってきているのです。

1.主力のオイルマネーだけでも270兆円規模の投資額から資金が撤退中

OPECの中心的存在であるサウジアラビアは自国が財政的な危機に瀕することを承知で、原油の大増産による市場でのダブつきから価格が大幅に下落し、イランやロシアなどが窮地に立たされ市場から撤退を余儀なくされることを狙った自爆テロ的な行動に出ているのが足もとの状況ですが、その戦略どおりWTIの先物価格は30ドルを割込みはじめており、売り浴びせをする投機筋が加担する形で原油相場の下落が止まらない様相を呈し始めています。

テクニカル的には既に売られすぎの状況を示現しているにも関わらず、人為的に下落を画策する市場の動きはコモディティ、株式ともに相場の大幅下落を誘うようになってしまっています。

※オイルマネーの運用金額ランキング
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上の表を見ていただいてもわかりますが、産油国はこれまで原油の精製と輸出により生み出された巨額の資金を国の経営によるソブリンファンドで運用をしてきており、各国の運用資金は国内のGPIFよりも小さいものの、まとめて見ますと2015年6月時点の金額合計でも270兆円という巨額の投資資金となっていることがわかります。

昨年8月にサウジアラビア通貨庁SAMAが金融市場で8兆円規模の資金引き上げを行った時にも大きく株価は下落しましたが、年明け以降もSAMAは投資資金の撤退を勧めており、米国ダウの大幅下落のみならず、これが日経平均やTOPIXを構成する値嵩株、優良銘柄の売りに大きく影響を与え始めていることがわかってきています。

現在積極的に投資案件の換金を行っているのはサウジアラビアですが、周辺の産油国も同様に財政的に逼迫しているのは同様の状況であり、各ファンドともに様々な投資商品の換金売りを出している状況が明らかになりつつあります。

2.国内株式相場では優良銘柄から売られる始末

こうした投資ファンドの換金売りは何のロジックもなくいきなり売り始めてくるわけですし、長期保有をしていた優良銘柄から売りはじめてくるため、日経平均やTOPIXの数字に与える影響は尋常ではないものとなってます。

有価証券の大量保有報告書を見ますと、国内の大手優良企業には少なからずオイルマネーの投資企業名が大株主として名を連ねてきたのがこれまでの状況で、間違いなく安定株主のひとつであったわけですが、これがまとまった形で売りに出ているわけですから、相場が下落しても戻るわけはない状況に陥っているのです。

たとえばトヨタ自動車では前場の朝一番に売りがでて、かなり下げたところを個人投資家やGPIFが買いをいれて戻ったところだまたまとまった売りがでるというイタチごっこの繰り返しが続いており、このようなオイルマネーの一定の換金売りが止まない限り、相場は簡単に戻らないことを示唆しています。

3.問題は換金の金額ボリュームがどの程度になるか

アベノミクスで株価が上がり始めた2013年欧米系の投資ファンド勢は年間でほぼ15兆円の株を買い上げたといわれています。

株価は9000円台から1万4900円レベルまで実に65%近く上昇したことになりますが、この中東を中心としたオイルマネーの1割にあたる27兆円程度が換金され、しかもその半分が日本株を中心に売却されるようなことになれば2013年のアベノミクスの株高の逆展開に近い下落も考えられるわけで、非常に大きなリスクになりつつあることがわかります。

しかもこうした売りは投機筋のように買戻しのない完全な売り玉となってしまいますので、他のファンドが買いに回らないかぎり市場売買の7割を海外勢に依存する東証ではその下落をカバーすることはできないのが現状となってしまいます。

4.米国市場では年末のヘッジファンド閉鎖に伴うファンド解約の影響が示現

昨年末比較的中小のエネルギー系ジャンク債を扱うファンドが売り止めになってしまったことから、ヘッジファンドへの投資家の解釈が殺到しましたが、その売りが年明けになって粛々と遂行されているのも各国の金融市場を大きく下落させる要因となっているようです。

どれだけの金額規模になっているかは明らかではありませんが、解約売りとともに、グローバルマクロに代表されるようなヘッジファンドの商品の投資ポートフォーリオのリバランスも進んでいることから、広範な商品に売りがでていることも相場下落の要因のひとつとなっているようです。

5.金融市場は典型的な流動性パニック状態に

そうでなくても実態がよくわからない中国上海市場の相場の乱高下や中国人民元の切り下げのおかげで欧米系の投資家は言い知れぬ雰囲気の悪い相場状況に直面していますから、なにかちょっとした変化があっても異常なほど過敏に反応する事態が続いています。

したがって、リスクを感じてほとんどの市場参加者が売りに回ってしまうと買い手不在の流動性パニックが起きることになり相場の下落が自らさらなる下落を招く結果になってきているように見受けられます。

6日連続のダウや日経平均の下げはその典型的な状況といえます。

6.原油価格がさらに下がればエネルギー系ジャンク債のデフォルトも加速

困ったことに原油価格の下げはシェールガス関連で資金調達に利用されてきたエネルギー系のジャンク債のデフォルトをさらに加速させる可能性がでてきています。

またエネルギー系企業は石油に限らず大手がもはやぎりぎりのとこで踏みとどまっている状況であり、破綻が連鎖すれば2007年にパリバショックからサブプライムローン問題へと広がりをみせた最悪の状況が再現される可能性もあり、非常に危惧される時間帯にさしかかってきています。

7.原油相場は経済戦争の場に変貌

需給のバランスだけで価格が決まるのであればまだ納得がいきますが、サウジアラビアの石油大増産は市場ごと産油国をぶち壊してしまうのが狙いですから、テクニカルツールを使って相場の先行きを想定してもほとんど意味が無いのが実状です。

NYタイムで原油価格が暴落すれば翌日の東京市場は前日の相場との脈絡は一切無いままに大幅下落するというのが14日の状況ですから手の施しようがない状態であり、非常に相場に手を出しづらくなっているといえます。

為替の話をするためにここまで株や原油市場のことを気にしなくてはならないのはもはや異常な雰囲気ですが、当面ドル円は徹底した戻り売りを心がけ、タイトな逆指値を入れて上に持っていかれたら入りなおすぐらいの覚悟で望む必要がありそうです。

2月に入れば中国が旧正月でお休みになりますので一旦はリスクファクターが減ることになりますが、石油価格の問題はそう簡単には決着がつかない様相を呈してきています。

実際この流れを受けて、ドルルーブルは壊滅的に下落していますし、カナダドルも下落が止まらない状況で、石油とは関係ない資源国通貨である南アランドは対ドルでも史上最安値を示現しており、サウジアラビアの根絶やし戦略はかなりその結果を露わにしてきています。

今年の相場は決して去年の延長線上ではないことをしっかり認識して丁寧に相場についていく売買を心がける必要がありそうです。


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コメント

  1. iwata より:

    貴重な記事ありがとうです。

    こころしてトレードしていきます。

    1. 360fx より:

      ご覧頂きまして誠にありがとうございます。
      また、記事がお役に立てたようで何よりです。
      今後も有益な情報を発信できるように頑張ります。

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