原油価格の底割れはグレンコアの破綻の可能性あり

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11月19日に発表されたFOMC議事録で12月利上げがほぼ確定的となったことから、材料出尽くし感と感謝祭を前にしたポジション調整などもあり、ドルを中心として為替相場は一旦ドル売り調整を進めている状況にあります。
フランス・パリのテロも大きなリスクオフ状況が示現するのではないかと危惧されましたが、実際には大きな動きにはならず、月末を迎えようとしています。

そんな中で投機筋をテロよりもさらに心配させているのが原油価格の下落です。

WTIの原油価格が30ドルの底割れをするような事態に陥れば、大きな暴落相場を引き起こすことになりかねないからです。

1.WTI原油はまたしても下値を狙う動きに

今年8月に一旦底をつけたWTIの原油価格は、9月のFOMCで利上げが年末までないという状況が明確になってから戻りを試す局面もありましたが、足元はまたしても下落を窺う動きをしはじめており、パリのテロ後のリスク回避からの買いもまったく続かず、リスクのときの原油価格とはならない状況が続いています。

コモディティ価格は原油に限らず、銅や石炭もほぼ5年ぶりに安値水準での取引が続いています。

2008年から2009年の金融危機に伴う大幅下落では、中国が救世主として市場に登場し価格を逆戻りさせる大きな力になってくれましたが、今回はそうした助け舟が登場する可能性はなく、原油・銅・石炭の先物価格は2015年前半にかけて下落からほぼ横ばいの状況を継続させています。

チャートの月足をみていますと、WTI原油の先物は完全に底割れ寸前であり、需給のバランスから在庫が減るとの楽観的な見方が広がった時期もありましたが、現実はそうなっていないことがわかってきています。

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2.グレンコア株価の動向に息を飲む市場

ここであらためて市場で注目されるのがグレンコアの株価の動きです。
中国経済後退による資源価格の下落が起因して、グレンコアの株価は9月28日のロンドン市場において突然売り込まれることとなり、29%下落の68.62£まで急落しました。

これは、今年の高値である4月313£から78%の下落であり、一旦は落ち着いたかに見えましたが、株価はまたじわりと下がりはじめています。
日本でも、日経平均はこの会社の暴落のおかげで1万7,000円台に叩き落されていますから、社名だけはご存知の方も多いことと思います。

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グレンコアはスイスの著名な相場師・マーク・リッチ氏によって1974年に設立された会社で、2011年に株式を公開して以来、2008年のリーマンショック後当局の規制で業務を拡大できないゴールドマン・サックスなどのライバル達を引き離し、商品取引分野で大躍進を遂げるとともに、2013年5月に資源メジャーであるエクストラータを合併したことで、鉱業部門で世界4位、商品取引部門で世界1位の企業になった存在です。

売上げは日本円にして26兆円ほどで、スイスでは売上げ規模別では最大の企業という存在です。

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グレンコアのビジネスモデルは複雑怪奇であり、単純に資源を採掘して売却することにより利益を上げるといった単純なものではなく、取引量以外にはその内容を明らかにしていないのが良くも悪くも同社の特徴となっています。

実際、外部に伝わっているのは、日本円にしてざっと3兆7,000億程度の債務を抱えているということですが、事業の性格上債務は抱えやすいとも言われており、市場関係者からは実はもっと大きな債務がそれ以外にも隠れているのではないかという不安の声が聞かれます。

3.銅でやられて原油のデリバティブで壊滅的状況に

世界の銅取引の5割を扱うというグレンコアは、中国起因で大きく値を下げた銅の先物市場でこっ酷く損失を被ることになります。

さらに、この間の原油価格の大幅下落で原油のデリバティブでも莫大な損失がでているものと見られています。
WTI原油先物市場の月間取引高は8,400億ドル規模であり、ニューヨーク株式市場の月間取引高の半分に相当するほど巨額です。

グレンコアはその石油取引の3%以上に関与してきているため、損失規模は銅の先物どころの話ではなくなり、今後WTIの原油価格が底割れすれば、株価の暴落のみならず企業としての破綻も視野に入ってくることになるわけです。

これが果たして年内なのか年明けなになるのかは依然不透明ですが、原油価格の下落はエネルギーコストの低減で恩恵もあるはずなのに、先進各国の経済ではデフレを加速するドライバーにしかなっておらず、しかも9月28日のように株式相場を暴落に追いやる大きな引き金となることから、欧米の投機筋は非常にその動きを心配していると言われています。

この話で、多くの市場関係者の頭をよぎるのは、2001年に巨額の不正経理・不正取引による粉飾決算がばれて破綻に追い込まれた米国のエンロンの存在で、当時の負債総額は400億ドルを超えていたわけですが、破綻直前の年間売り上げは1,110億ドル(13兆6,000億円)ほどですから、グレンコアの現在の企業規模のほうがはるかに大きく、しかも扱うコモディティの下落幅は半端のないレベルに陥っていますので、第二のリーマンショックの引き金になりかねないと見る向きが多いのもうなずける状況です。

4.欧州系の銀行はグレンコアに10兆円以上の債権をもつ状況

ますます恐ろしいのは、このグレンコアに対して欧州系の銀行が日本円にして10兆円以上の資金を貸し付けていることで、先般の株価暴落でCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の5年物が50%の確率で倒産するほどのレベルにまで急騰した時には、かなり冷や汗をかいた金融機関が多かったはずです。

したがって、このグレンコアが一段の原油先物価格の底割れで耐え切れなくなった瞬間に、欧州発で第二のリーマンショックがスタートする可能性は、決して低いとはいえない状況になっているというわけです。

5.炭鉱のカナリア ハイイールドボンドETFも変調を来たす事態に

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米国では、ハイイールド債、つまりジャンク債ETFの価格の推移が相場の大幅下落を占う意味で、炭鉱のカナリアと呼ばれるものとしてファンド勢の将来予測の大きな助けになってきていまますが、9月のFOMCの利上げ見送り、ECBの追加緩和意向、そして中国の利下げなどによりなんとか継続した大幅下落を免れた、このハイイールドボンドETFの価格がまたしても下落を始めており、投機筋の不安を煽る結果となっているのです。

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添付のグラフは、HYG,USiシェアーズETFのチャートですが、前回のグレンコア株価の暴落で大きく値を下げたものの、10月に入って一旦戻りを試したはずが、ここへ来てまたしても下値追いをはじめる状況で、いよいよ警戒警報が発令されていると見てもいいレベルに近づきつつあります。

グレンコアが破綻すれば、米国のエネルギー系のジャンク債はつぎつぎデフォルトに直面することになるはずですから、株もコモディティも大幅下落で、日経平均が連動することはほぼ間違いなく、ドル円が100円方向に向けて底値を試しにいくことだけは容易に想像できるものです。

問題はそれが年末なのか、年明けなのかですが、まさにWTIの原油価格次第といえそうで、30ドルを底割れした時には、一旦手仕舞って暴落を見届けてから再参入する機会を探ることとしたい状況です。

果たして、これが取り越し苦労に終わるのか現実のものになろうとしているのかは現段階ではまったくわかりませんが、少なくとも今年まったく儲かっていないヘッジファンド勢がこの状況をみながら、恐る恐る市場で仕掛けをおこなっていることだけは間違いのない話です。

それぐらいグレンコアに端を発する破綻劇が市場に与える影響が多いことを示唆しているのです。

iシェアーズiBoxx米ドル建てハイイールド社債ETFの価格の動きは、ひとつの危険指標として今後も注目されることをお勧めします。


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