日銀現状維持で一気に巻き戻った「焼け野原相場」のこれから

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市場の期待が高まった4月28日の日銀の政策決定会合結果発表ですが、昼の12時ちょうどに早々と現状維持が出てからものの数分でドル円は3円以上下落し、黒田総裁の会見を前にさらに下落、108円を一瞬割り込むほどの、全体として4円ほどの大幅下落となってしまいました。

もともとブルームバーグの不明確な観測記事ひとつで買いあがった、あるいはショートはずしで大きく戻ってしまったドル円相場でしたが、日銀はなにもしていないとは言え、市場とのコミュニケーションをしっかりとっていればここまで焼け野原の相場に逆戻りすることもなかったのではないかとその対応が惜しまれる状況です。

問題はここから先どのように相場が展開していくかですが、テクニカル的に見ますとドル円もクロス円も下落トレンドに復帰した感があり、ゴールデンウイークという本邦勢不在の期間を経てどのように動いていくことになるのかが注目されるところです。

※図1ドル円日足チャート
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相場下落を覚悟で臨んだ日銀の現状維持発表

今回の日銀政策決定会合での現状維持に伴う株と為替の大幅な下落は、いくつもの不幸な積み重ねが起因したものといえます。まず、ソースのはっきりしないブルームバーグの観測報道が日本語で読めばかなりあやふやであるにも関わらず英語版ではBOJ said toという形であたかも日銀関係者をソースとした報道であるかのように欧米市場をめぐってしまったのは大きな問題となりました。

所詮観測報道ですから当たるも当たらぬも結果を待つしかなかったわけですが、おりしも1992年以来に積み上がった投機筋のドル円ショートは、この報道で否が応でも買い戻しを余儀なくされたわけで、緩和期待の上昇もあったでしょうが、事前のショートカバーが異常に飛び込み台を高くすることとなってしまいました。

また中央銀行の金融政策だけに依存しようとする相場の状況もここまでくれば日銀は何もしないはずはないという妙な確信的期待につながってしまったようで、現状維持自体それほど売り込まれるネタではなかったはずが大きな失望売りとなり、しかも事前にしかけたイベントドリブンファンドがさらに売り浴びせをしかけたことからドル円はほとんど4月初旬のレベルにまで戻ってしまうという大変な焼け野原相場を示現することとなりました。

日銀はこのタイミングで何も追加緩和をしなければ相場が逆走して株も為替も下落することは容易に認識していたはずですが、結果的にゼロ回答を決め込み、大きな下落放置する結果となってしまいました。

現政権と日銀は一枚岩でないこと明確に示唆

今回の下落は、日銀の政策担当者にとっては、市場が勝手に憶測で買い上げて、勝手に売り浴びせただけと捉えているのかもしれませんが、こうした市場の乱高下は市場参加者を著しく疲弊させ、もとに戻るのにまたかなりの時間とコストのかかるものになってしまいます。それでも黒田日銀がこのタイミングにバズーカを出してこなかったのは、なんといっても消費増税が担保されないなかで、単純に政権の選挙対策のためのような緩和は行わないという強いメッセージが込められている感があります。

2014年10月末の黒田バズーカ2ではその直後に消費増税延期の梯子はずしを経験しているだけに黒田総裁は同じトラップにはひっかからないことを政権に示しているのではないでしょうか。実際、足元では官邸主導で伊勢志摩サミットに向けて総動員の政策対応をつめているようですから、消費税も増税延期のみならず時限的に5%逆戻りなどというウルトラCが飛び出す可能性も否定できない状況です。

株価を上げ、円安にしたいという結果については政権も日銀も思いは同じようですが、片や政権のほうは参議院選に勝利して憲法改正をしたいだけですし、財務省と黒田総裁は消費税率アップの予定どおりの実施が悲願ですから、かなり似て非なる関係であることが、あらためて市場に知らしめられたといえそうです。

サプライズ型の市場対応は既に限界に到達

日銀の前総裁である白川氏はまじめな学者出身でしたから、ドラスティックで市場でサプライズを引き起こすような政策決定というものはほとんど行ってこない存在でしたが、黒田氏は財務省で為替のオペレーションにも深く関与した存在であったため、とにかく就任後は市場サプライズというものを非常に重視して政策を打ち出してきていることがわかります。

実際、2013年と2014年のバズーカの威力は絶大でドル円はあっという間に10円以上上昇するといった成果がでたことは確かです。こうした経験をもつ市場は今回もなんらかの緩和措置がでるものと過剰に期待した感がありますが、マイナス金利貸付報道についても、事前段階で「今のところそうした内容が考えていない」とひとこと日銀関係者の口から市場に対してのコミュニケーションがあれば、ここまで勝手に買い上げて、暴落するといったプロセスは防げたはずで、市場との対話の方法にもかなり問題があることを感じさせる動きとなっています。

このサプライズ型の政策発表はすでにECBが過去2回の緩和で大失敗しており、中途半場な内容なら期待を裏切る形となり、てんこ盛りなら材料出つくしと判断されることもあり、今回の無風の政策による失望売りも含めて、いまや何をしても売り圧力にさらされる可能性が高まっていることも、あらためて明確になってきています。

市場は常に強い麻薬を中央銀行に期待し、何を出しても聞かなくなるプロセスに既に入ってしまっているのではないでしょうか。

いよいよ月の後半まで空白の5月相場

4月の主要国中央銀行の政策決定会合をこなし6月までは政策決定に関しては、ここからはしばらく無風の時間帯を経過することになります。また伊勢志摩サミットの政策対応もぎりぎりに発表して会合を盛り上げることになることでしょうから5月は中盤まで何も国内的には材料がない時間帯にさしかかります。
さらに連休明けから本邦企業の決算が発表されはじめて必ずしも思わしくない結果が続出しはじめると株価の下押し材料になり、なによりPERの上昇は外人投資家の日本株離れにつながることとなります。例年5月は、ドル円は下落傾向が顕著になりますから、ここからは上昇を支える材料が乏しくなることも認識しておく必要があります。

こうした状況は常にチャートで確認してトレードに落とし込んで行く必要がありますが、5月については短期的に下落トレンドになる可能性があり、クロス円もそれに引きづられる展開に注意が必要になりそうです。

また、今年のゴールデンウイークは平日のお休みの並びが非常に長く、本邦勢不在の時間が例年以上に長くなりますので、今回ドル円の無闇な上昇で損失を被った短期の投機筋によるリベンジのドル円ショートが大きく進み休みの期間中に105円を抜ける展開になることも想定しておく必要があります。

米国ルー財務長官からは現状は極端な円高ではないといった介入絶対けん制発言も得られた後ですから、連休中に大きく相場がさげても国内の金融政策当局はレートチェックすらできない状況で、100円に近づく可能性も否定はできません。

一旦は22日で下追いが終わったかのように見えたドル円相場ですが、下落の本番はいよいよこれからということになりそうです。特にヘッジファンドは5月末決算ですから、この連休は絶好の稼ぎ時になりそうで、ロンドンタイム以降の相場の動きには通常以上に注意が必要となりそうです。


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