ミスター・マーケットとの付き合い方を考える

バリュー投資の父といわれるベンジャミン・グレアムは、投資哲学の考え方の一つとして、株式市場を「ミスター・マーケット」として擬人化して説明した。

グレアムは1934年に『証券分析』を、1949年に『賢明なる投資家』を出版し、以来この二冊はこれまでに執筆された投資に関する書籍の中でも最も権威ある書物とされているが、グレアムはこれらの本の中でミスター・マーケットに関して言及している。本記事ではミスター・マーケットについて解説するが、これは投資家にとっては常識的な話であるため、すでに知っている人も多いと思う。しかしながら、これから投資をしていきたい人にとっては必須の知識であるため、あえて解説することをご容赦頂きたい。

さて、ミスター・マーケットの人物像を見て行こう。

ミスター・マーケットは、いつもあなたを訪ねてきて株価を提示してくる人物である。毎日必ずあなたの元を訪れ、株価を提示し、その価格であなたの持ち株を買うか、もしくは自分の持ち株を売ろうとしてくるのである。
しかし、ミスター・マーケットは躁うつ病である。その日によって気分が大きく異なることが珍しくない。そのため、ある時は喜々として高値を提示したり、またある時は陰鬱な表情で安値を提示したりとさまざまである。

躁状態では良い材料しか目に入らないため高い株価を提示し、鬱状態では悪い材料しか目に入らないため安い価格を提示するのだが、その株価は企業の真の価値を的確に表したものでないことが多い。

提示される株価は不安定であり、時に気まぐれと思える株価を提示してくることもある。

ミスター・マーケットを無視できるか?

ある時、ミスター・マーケットがあなたの元をおとずれ、にこにこしながら

「○○の株がこの3ヶ月で倍になっているんだ。すごいよ。買わないかい?」

と言ってきた。
この時あなたはどうするだろうか。ミスター・マーケットの言葉に乗せられて買うだろうか。

もしくは、ミスター・マーケットががっくりと肩を落としながら、

「○○の株が急落している。君の株は安くでしか買えない」

と言ってきた。これはどうだろうか。

上述の通り、ミスター・マーケットの提示する株価は気分的な部分が大きい。それが分かっていればミスター・マーケットが何と言おうと基本的には無視し、分析の結果自分が納得できる株価を提示した時にのみ売買することだろう。いくらにこにこ顔で高い株価を提示されても「高いよ」と断り、いくら落ち込んで安い株価を提示されても「安いよ」と断ることができるのである。

考えても見てほしい。株価の上げ下げは日常的に起こるものである。それが人気の株であれば、投機的なお金もたくさん流れてくるため上げ下げは大きくなりがちである。

ミスター・マーケットから高い株価を提示されて買ってしまう人は、さらなる値上がりによって利益を出すことを期待しているのであるが、そのような保証はどこにもない。同様に、安い株価を提示されて売ってしまう人は、さらなる値下がりによって損失が拡大することを恐れているのだが、そのような保証もない。安値がいくらで高値がいくらであったかというのは後になって分かることなのだが、それを事前に予知できるという気になっている投資家が非常に多い。

だからこそ、希望的観測でミスター・マーケットと取引をしてしまうのだ。

ミスター・マーケットの気まぐれ

ミスター・マーケットの気まぐれがどのようなものであるか、実例を見てみよう。

2000年3月17日、ミスター・マーケットはインターネット検索ソフト会社であるインクトミ社の株価に対して231.625ドルの高値を提示した。上場は1998年6月であったが、その時の株価と比較して実に1900%の高値であった。株価が急上昇を始めたのは1999年12月のことであり、わずか数週間で3倍に上昇した。
インクトミ社のウィキペディア

これは、ミスター・マーケットの気まぐれであったが、ミスター・マーケットの気まぐれと思わない投資家たちはざわついた。

確かにインクトミ社のビジネスは確かに急成長しており、1999年10~12月期の売上高は3600万ドルになった。成長は著しく、その成長率を5年も維持すれば1ヶ月あたりの売上高は50億ドルになるはずであった。もちろん、成長率が5年も維持されるとは考えにくく、50億ドルの売上高というのも非現実的である。しかし、投資家たちは目の前の素晴らしい急成長を見て、高値の株に飛びついた。

一方、ミスター・マーケットを追い返した投資家たちもいた。インターネットバブルはいつか崩壊するから控えるという投資家もいれば、市場の熱気を感じ取って近づかなかった投資家もいれば、冷静に分析した結果異常を察知した投資家もいた。結果的にはこれが正解であった。

インクトミ社は売上高を伸ばしていたものの、実際には巨額の損失を出していたのである。

直近の四半期で600万ドル、それ以前の12ヶ月間で2400万ドル、その前年にも2400万ドルの損失を出していた。このような企業に対して、ミスター・マーケットは株式時価総額250億ドルという評価をしたのである。
当然、株価が上昇しつづけるはずはない。231.625ドルであった株価は2年半後には25セントにまで下落した。株式時価総額は250億ドルから4000万ドル以下になった。
しかし、そのころにはインクトミ社のビジネスは改善されており、その前の1年間には1億3000万ドルの利益を出していた。しかし、ミスター・マーケットが青ざめた顔で安値を提示するものだから、高値で買った投資家たちは恐れをなして売り急いだのだ。

国内の最近の例では、ガンホー・オンライン・エンターテイメントが良い例であろう。
同社はスマホゲームの「パズル&ドラゴンズ」の大ヒットによって株価が急上昇し、一時1633円まで上がった。上場は2005年の会社であるが、時価総額は1兆5455億円となり、1962年上場の大企業・任天堂を抜いたほどだった。

しかし、ミスター・マーケットに高い株価を提示されて買った人は安易な判断をしてしまったといえるだろう。ガンホーはパズドラが収益の柱であり、それ以外になんら特色はない。スマホゲームの開発は競争が非常に激しく、パズドラの人気が長期間にわたって続く可能性は極めて低い。いずれミスター・マーケットは青ざめた顔で訪ねてくるだろう。そう判断するのは難しくなかったはずだ。
2016年2月現在、ガンホーの株価は1株300円以下になり、時価総額も3000億円以下へと下がっている。高値圏で買った人は大損である。

これらが、ミスター・マーケットの気まぐれの良い例である。

ミスター・マーケットとどう付き合うか

もちろん、株の価値をそこなう大きな事件が起こり、会社が倒産する可能性があったり、回復までに長い期間を要すると判断すれば、ミスター・マーケットと取引をして持ち株を売るという選択もあるだろう。また、そもそも買ったことが間違っていたと思っているならば、それも売って良いだろう。しかし、自分がきちんと分析し、この株なら大丈夫だと思って買っているならば、ミスター・マーケットから惑わされてはならない。適正な価格でなければ取引してはいけない。このような文章を目にすると、「そうだ」と思う人も多いだろう。しかし、ミスター・マーケットの気まぐれとその気まぐれに踊らされる群衆の熱狂をみれば、実際に心を動かされない自制心を保つことは容易ではなく、多くの投資家が損失を出すのである。

ならばどうすればよいか。
取引にきたミスター・マーケットを追い返してしまえばいいのだ。

ミスター・マーケットは気のいいヤツなので、何度追い返しても気にしない。明日にはまた新しい株価を携えてあなたを訪ねてくる。だから気に入らない株価ならば無視すればいい。彼の提示する株価に影響されないことが大切なのだ。
グレアムのこの逸話から、以下の心得を学ぶことができる。

  • 市場は気まぐれに動くことが非常に多く、提示されている株価は企業の本来の価値とかけ離れていることが多い。また、将来の株価を予測するのも不可能である。
  • ミスター・マーケットは気分屋であるから、正気とは思えない株価を提示してきたときには無視すること。可能ならばミスター・マーケットを利用しても良い。

まとめ

投資の初心者にとっては、まずは「無視すること」を考えるのがよいだろう。

株で損をする原因を簡単に言えば、それは「高すぎる株価で買った結果、値下がりした」という事である。
もし空売りをする投資家ならば、安すぎる株価で空売りした結果、値上がりして損失を出すこともあるだろう。

株式投資においては、失うよりも稼ぐ方がはるかに難しい。100万円を年利7%で運用すれば1年かけてようやく7万円を得られるが、ミスター・マーケットに影響されて取引していては、7万円くらいはすぐに吹き飛んでしまう。したがって、ミスター・マーケットから提示された株価に対して、明確な根拠をもとに適正・安い・高いの判断ができないならば無視することだ。無視して買わなければ損をすることもない。

ミスター・マーケットとの付き合いがうまくなったならば、彼を利用すればいい。彼は無視して追い返されても気にしないし、利用されても気にしない。にこにこして高い株価を提示してきたときには自分の株の一部を売れば良いだろう。落ち込んで安い株価を提示してきたときには、ラッキーとばかりに買ってしまえばよい(もちろん、これらはその企業を分析したうえでの行動である)。

このように、ミスター・マーケットの気まぐれをうまく利用することができるようになれば、「安値で買い高値で売る」というマスターゲームも可能となるであろう。

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ABOUTこの記事をかいた人

個人株式投資家、兼フリーライター ゴーストライターとして株式投資の短期売買の書籍を執筆したことから株式投資に興味を持ち、独学で勉強を始める。ベンジャミン・グレアムの投資理論に傾倒するようになり、グレアムの理論を習得すべく『賢明なる投資家』を全文手書きで筆写した。その後株式投資を再開、成績は良好。真のグレアム学派になるべく、日々研鑽を積み重ねている。