日銀のマイナス金利導入で起きる難解なパラダイムシフト

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日銀は29日の政策決定会合後、マイナス金利を導入すると発表し、それを受けた株式市場はまず上昇したあと大きく売られることとなり、さらにそのあと全値戻しという猛烈な乱高下を示現してしまいました。

これはマイナス金利がもたらす金融機関へのネガティブインパクトが大きく、市場で理解しやすい金融緩和ではないことを如実に示したものであり、これまでの黒田バズーカ1,2と違って政策のわかりやすさというものが消滅し、単純な円安、株高市場が訪れないことを示唆するものとなってしまいました。

ドル円はNYタイムに121円に乗せる動きとなりましたが、122円には遠く及ばず今後も上値を追う121.60円レベル、さらに200日移動平均線のレベルである120.472円付近を下回ってNY市場を終えていることから、今後戻り売りが強まることも想定され、週明け以降の為替相場の動きが注目されることとなります。

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1.銀行の利益圧迫は間違いない状況

2014年10月末に消費税対策の勇み足で見切り発射してしまった黒田バズーカ2では、政策発表後すぐに株も為替もリニアに上昇をはじめ日経平均は1カ月強で2372円、ドル/円は12円上昇することとなりましたが、今回の緩和措置については市場がその内容を理解するのに手間取るかたちとなり、アルゴリズムの初動で日経平均もドル円も大きく買われたものの、日経平均.N225は発表直後に600円近く上昇した後、約270円安まで下落することとなり、その後また上げて終値は450円高で終了しています。

当然為替もそれに追随するわかりにくい動きとなり、初動で121.400円レベルまで買いあがったドル円は実に短い滞留時間で121円台からずるずる下落することとなり、一時的に119円台にまで大幅下落することとなりました。

12月18日に買い上がったあと大幅下落で大打撃を受けた投資家の多くには12月日銀相場の再来が頭をよぎったはずで、上昇のピークで利益確定をしそびれた個人投資家の多くはせっかく上げた相場利益にもかかわらず突然の逆走状態で損切りを余儀なくされた方も多かったことと思います。

しかもここで機転を効かせて戻り売りをした投資家は119円で切り替えして再上昇した相場にまたしても串刺しにあい、せっかくの上昇相場なのに往復ビンタの洗礼を受けてしまったというケースも見られました。

これは、特に株式市場において銀行株への影響を一元的に評価しにくいことが大きな理由で、29日メガバンクをはじめとする金融機関の株は大きく下落することとなり、当座預金を3つのケースに分けたとしても銀行への利益圧迫だけは現実のネガティブインパクトとして意識されるようになっています。

2.日銀の対応次第では必ずしも銀行の付利分はなくならないという難解さ

日銀では、今回の措置の実施に当たって金融機関が日銀にお金を預ける当座預金を3つに分割すると発表しています。

これまですでに預けた200兆円程度の預金にはプラス0.1%と従来通りの金利を適用するので影響はでませんし、経済成長などマクロ的に増加する分にはゼロ%を提要することとなりました。

しかし今後新たに国債の買取オペレーションで積み増す部分にはマイナス0.1%の金利を適用するというのが今回のマイナス金利のポイントとなっています。

日銀は、マネタリーベースを年間80兆円増額するという量的緩和も継続しており、金融機関が今後日銀に国債を売った場合には日銀に預けても損失がでることになります。

つまり、この分の利益額は失われることになると想定されますが、金融機関から国債を買う際にマイナス0.1%を上回るような高い価格で買えば、国債売却で受け取ったお金が日銀に預けている間のマイナス分を上回り、利益を得ることから、実際のところこの政策が金融機関にどのように影響を及ぼすのか当の金融機関を含めてその評価が実にまちまちになってしまい、結果が株の乱高下につながっていることは間違いないと言えます。

こうした状況は今週で収まったわけではなく、週明け以降もさまざまな憶測が流れて市場が動く可能性を残したといえます。

3.金融機関が国債を売らなければ結局緩和措置は効果を表さないという指摘も

現状でメガバンクのみならず地銀や中小金融機関、ゆうちょ銀行、生保などを含めた金融機関が保有する長期国債の額はほぼ500兆円存在すると言われていますが、担保のために売れないものを除けば買取可能額は250兆円程度と見られています。

しかしこの買取が日銀の発表した額面どおりマイナス0.1%の金利導入で、買取額になんの手心が加えられないことになれば国債の買取入札に応じる金融機関が減少し、毎回札止めとなる可能性もでてきていることになります。

日銀は自行で保有する国債の償還分の乗り換えを含めれば年間で120兆円の国債買い入れを達成しなくてはマネタリーベース80兆円を実現することはできず、新規国債の買取だけでは実現不可能であることから、銀行などが国債売却に応じなければ結果として達成はできなくなり、マイナス金利もなにも意味がなくなる可能性もでてきているのです。

これは即ち、今回再バズーカの手立てとして残すこととなった国債買取金額の80兆から100兆や120兆円といった増額が実質的に機能しないことを示唆するものにもつながるため、結果として金融緩和の限界論を払拭したはずが、自らその制約を露見させるものになってしまうことも考えられる、実に微妙な状況となってきています。

4.既存国債利率の低下で金融機関の運用益は大幅に下落も

今回の日銀の決定では国債買取後の当座預金金利の話ばかりがクローズアップされていますが、既存の国債の利回りも大幅に低下していることから、国債を利用して資金の運用をする金融機関の収益も大幅に圧迫することが予想されています。

とくにその中でも運用比率が下がったもののまだ半分近くを国債に依存するゆうちょ銀行の運用益低下や地方銀行に与える影響はかなり大きなものとなることが予想されており、マイナス金利の実施は当初の想定以上に金融機関に影響を与えることになりそうです。

こちらは今後さらに具体的な影響がでてくることになりますので、実際の影響を精査するためには時間が必要となりそうですが、古悦の金融機関の株価への影響は必至の状況で、これまでのように全産業で株価が一元的に上昇というわけにはいかないようです。

5.国内で融資が拡大するとしても担保のとれる不動産業程度か?

日銀の当座預金にマイナス金利が適用されればブタ積みが消えて市場に資金が出回りやすくなるということは誰でも理解できる構造ですが、実際上場企業をはじめてとして大手は現金の保有比率が高く、内部留保金も過去に例のないぐらい潤沢な状況ですから、需要があるのは与信力の低い中小企業が中心となることが考えられます。

したがって金融機関が融資枠を増大できるのは担保価値のある不動産業など一部に限られることとなり、実体経済へのポジティブインパクトはそれほど大きくならないという見方もでてきています。

人口減少が叫ばれ、都市部の一部、東京なら山手線の内側以外の不動産への投資以外は妙味がなくなりつつある中で、不動産業への資金提供が国内経済の活性化につながるのかどうかは甚だ大きな疑問が残ります。

この政策でどのような企業へ融資が進むことになるのかも注目されるポイントといえます。

6.為替・ドル円は当面120円~122円程度の狭いレンジ取引を示現か

さて、長々と書きましたが、為替についてはどのような影響がでるのかが注目されます。

一旦は大幅な円高を市場は回避することになると思われますし、明確な日米の金利差から言えばドル円は円安方向に転換することは間違いないと考えられます。

年明けからの上限である120円が逆にサポートラインになるものの、この材料だけで大幅に買い上げられることも想定はし難く、122円台が上限となるかなり狭いレンジ相場を形成することが想定されます。

また今回のマイナス金利導入で、円キャリートレードも増えることが予想されるため、リスクオフになるとこれまで以上に円が買われる可能性も高まることとなり、一方的に円安にはなりにくいことも想定されます。

7.年明けからの混乱相場の要因はマイナス金利では何も解決しない

今回の日銀の決定により、これまでにない一定のパラダイムシフトが起きたことは間違いないと言えますが、残念ながら中国市場の不安要因も原油価格の下落も、さらにこうした問題を外郭的に引き起こす元凶なのではないかと指摘されはじめている米国の利上げも、日銀の政策ではなんら解決がつかないものであることは忘れてはなりません。

つまり何かことが起きればまたしても円高にシフトすることが考えられますし、これまで以上に円買い圧力が強まる局面もでてくるということはあらかじめ理解しておかなくてはなりません。

さらにこの政策の賞味期限がどのぐらいもつものなのかについても大きな疑問符が残されることとなっています。

この内容では3月のFOMCまで持たない可能性もあるとの指摘も早々ではじめていますし、ドラギ総裁が見直しを示唆したECBの3月の追加緩和も足元での欧州景気の回復基調のなかで本当にやれるのか?という見方も高まりつつあり、結局のところECBとFedによる金融政策に先送りしただけの状況がここ1ヶ月から1ヵ月半程度続くことになりそうです。

国内市場では株もドル円もこれまでの追加緩和のときのように一方向にトレンドがでて上昇するかどうかは正直なところまだよくわからないのが実情で、特に為替についてはこれまでのような効果が期待できるとは思えない状況です。

この見方が正しいかどうかは2月の相場展開を注意深く見守ることで一定の結論を見出すことができそうです。


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