日銀のETF倍増買いで始まった株式市場破壊相場

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7月29日に日銀が政策決定会合で唯一決定したETFの買入れ額倍増を受けて8月は既に2回ほど707億円の日経平均ETFの買い入れが始まっています。

しかしこの日経平均ETFの場合、225銘柄の中でも値嵩株が特に値を上げる形となるために、目ざとくそれに気がついた投機筋や個人投資家がファストリやソフトバンク、ファナックなどを積極的に買い上げることにより特定の値嵩株だけで日経平均が維持されTOPIXとの乖離の激しいNT倍率のきわめて高い市場が形成されるようになってしまいました。

またドル円の円高とも連動感が殆どなくなり、日経平均はすっかり下げない相場となってしまいました。

市場参加者はすべて日銀頼みという異常相場

相場が下げなくなったのは確かに市場に一定の安心感を与えることとなりましたが、個人投資家をはじめとして前場で相場が下落すると日銀のETF買い期待から値嵩株を買うという動きがでるようになり、日銀の買いがでないと失望売りまで示現する不思議な相場展開が続くようになっているのです。

マーケットではこれまでのたった2回の購入実績だけをもとにして午前取引終了時点で東証株価指数(TOPIX)が前日比0.2%以上下げていれば、日銀からETFの買い注文が昼に入っていたとの認識が市場に広がり、勝手に日銀のETF買い付け条件がまことしやかに流通するようになってしまいました。

しかし8月18日は市場の期待とは裏腹に日銀はまったくETFの買い付けを行わなかったことから、失望売りが嵩むようになり、相場は日銀のETF購入をめぐって、かえって不安定な状況を継続させるようになってしまっているのです。日銀はオフィシャルにはETFの買い付け条件を市場に開示してはいませんから、あくまで市場が勝手に期待して売買を行っているにすぎませんが、それにしても個別の株式の業績連動での買付けから単に日銀の買付けだけに依存して相場が動くというのは実に不自然であり、そもそもの株式市場の健全性をまったく欠く行為になっていることが理解できます。

多くの参加者は日銀のETF買入れ基準を把握できないことに酷くイラつき始めており、これだけとってみても実に異常な相場展開が示現しつつあるのです。

相場自身がもつ自律的活力を完全に喪失

本来株式市場は下落することがあるから、それをバネにして大きく戻るといった自律的な機能を有しているものですが、日銀のETFの年間6兆円の買入れはそうした相場自身がもつ自律的な活力を一切無効にしてしまう、きわめて人為的な相場誘導管理であることから、本来上げるべきときにしっかり上昇することすら可能にしない、非常に歪な市場を形成させることになってしまっています。

しかも多くの市場参加者が日銀のETF買い入れだけを気にして売買を行うことから、株式相場が本来気にすべき企業業績の話は遠く、市場の期待通りに日銀が動かない場合は頻繁に失望売りがでるという、およそ資本主義の自由市場では起こり得ないような動きが顕在化し始めているのです。

いまやドル円は日経平均の相場の上昇には簡単に連動しなくなっていますが、その一方で株式の下落には敏感で、大幅下落が示現すればドル円も円高に移行するという面倒な展開になりつつあります。

ドルベースで最高値の日経平均に外人投資家の興味なし

ところでここのところの下げない日経平均にドル安円高が重なって、ドル建ての日経平均株価は昨年の日本円で2万円のレベルに近づくことになっています。

※ドル建て日経平均 出典 会社四季報
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本来であればもっと世界の金融市場では注目されてしかるべきなのですが、逆に日本株運用ファンドを閉じる動きも顕在化しており、日本の株式市場を視野に入れない外人投資家があからさまに増えていることも気になるところです。

夏休みに入ったばかりの8月12日にブルームバーグに掲載された報道によりますと、米国で主力系のファンドであるJPモルガンアセットマネジメントジャパンマーケットニュートラルファンドを9月1日付けで清算すると発表しています。

8月4日時点の運用額が1700万ドル、日本円にして約17億円と大きく減少し新規に資金を見込むことが難しいとの判断からこの日本株ファンドを清算することとなったそうで、ドル建てで高値となっている日経平均の足元の状況と異なるファンドの判断が働いている点がひどく気になるところです。

このファンドのリターンは7月末時点で同月次が2.1%。3カ月リターンはマイナス1.6%となっています。2011年6月3日の運用開始以来ではマイナス16.3%であり、投資のド素人で買えば損失しか出さないGPIFを笑えないほどの低水準の運用成績が続いており、昨年来の中国経済の変調や英国のEU離脱決定を受けリスク回避の円高が進行し、国内株価の低迷とともに、日本株に投資するヘッジファンドなどの運用成績も不振が続いていることから、日本株は投資対象として的確ではないと見なされ始めているわけです。

シカゴの調査会社ヘッジファンド・リサーチ社によれば、日本市場で運用するヘッジファンドの2016年上半期の収益率はマイナス6.1%で、運用額もそれにあわせるかのように減少しており3月末時点で15年6月末比14%減の262億ドル(約2兆7700億円)と、昨夏以降は資金流出が拡大している状況にあり、日銀のETF買いで外人投資家が大きく投資額を戻してくるのではないかなどと安易な期待をする証券業界とはまったく逆さまの動きが顕在化しつつあります。

やがて何をしても相場は失望売りにつながる動きに

日銀がETF買い増額ではじめた捏造的な管理相場は結局下がらないだけの措置を維持することになりますから、やがて多くの投資家の不満を増徴することになりかねません。本来ならば日経平均が大きく上昇することを狙って、とくに値嵩株を中心に買いあさりをする投資家は思ったほどに株価が上昇しなければ結局投資に対する不満を感じることになりますし、足元の状況のように日銀が期待通りにETFを買ってくれないとなるとそのたびに投売りや失望売りを繰り返すことになり、勝手に投資家らによって想定される高い期待値に届かなくなる株式相場は売られてお仕舞いになる可能性が極めて高くなってきているのです。

これまでの金融市場でもそうですが、自由な売買による相場の上下を伴わず寡占的に相場が買い占められるような状況は必ず破綻することで決着を見ることになっており、役人が机上の空論で相場をコントロールできると思っているのと金融相場の実態は大きく乖離していることを忘れてはならないところに差し掛かってきています。

海外のファンド勢もこうした日銀の管理相場にかなり辟易としているようで、ここからの国内株式投資にはかなり冷ややかな姿勢を鮮明にとりはじめています。

海外投機筋は9月の日銀会合で緩和の事実上後退を予測

さらに興味深いのは海外のメディアも投機筋も、日銀が9月の政策決定会合での総括と呼ばれる見直しにおいて、さりげなく金融緩和がこれ以上深堀できないことを示唆するのではないかと見ていることです。

もちろん正面切って緩和はもうできませんと言い始めれば株も為替も大暴落ですから、そうした言葉遣いは口がさけてもできませんが、ターゲットとなるインフレ目標をマイルドにするとか、タイムフレームを撤廃してできるだけ早くといった形に切り替えるなど、なにか後退をかんじさせる枠組みを今回提示してくるはずであるとネガティブに期待しはじめているところも非常に注目されます。

つまり海外のメディアやファンドが見て日銀が金融緩和を後退したという印象を持つような内容が織り込まれれば、即株も為替も売り込まれることを示唆しているわけです。

既に為替相場、特にドル円は日銀手動のETF買付け管理相場の動きに連携しなくなっています。

したがって株高、円高相場も視野に入れて売買をしなくてはならない時間帯に差しかかってきていると言えますが、株価が大幅に下落すれば、なぜかその動きに連動して下げてしまうのがドル円の悲しい特徴ですから下落局面については依然として厳重な注意が必要となりそうです。

日経平均の実に異常な足元の動きがいつ相場で広範に嫌気されて大きく下げるきっかけになるのかはよく判りませんが、少なくともこの状態が長く続いてめでたしめでたしとはならない気がしてなりません。そんな夏の終わりの国内ならではの相場状況が継続中です。


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