米国FRB利上げ見送りで次に起きること

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20150929_01

17日(日本時間18日午前3時)アメリカFOMCでは期待されていた利上げを見送り、現状維持の判断とすることを決定しました。

3時に発表された声明文では利上げの条件はそろったものの、中国と新興国の状況から見送った旨がその理由の1つとして記載されるようになっており、既に利上げ実施が国内の条件のみならず海外要因の影響を受けはじめていることを色濃くする結果となっていることを示現しています。

1.年内実施が依然有力視されながらも実施ができるかどうか危うい状態に

議事の詳細については議事録の開示を待つ必要がありますが、投票権のない委員も含めると13名が年内利上げを依然予想しており、10月以降も利上げが行われるかどうかに注目が集まることになります。

しかし、その後のイエレン議長の会見で、インフレは目標を下回る水準が継続しているとしており、初回の利上げ時期を過度に重視すべきではないとか、利上げタイミングは経済見通し評価によるとして、その実施には引き続き慎重に対応することを強調しています。

一方で、当局の大半は引き続き年内の利上げ開始を予想とし、利上げの軌道は想定よりも早くも遅くもなりうる、10月の利上げ開始も可能であることを強調しています。

しかし、インフレ2%というターゲットは世界的なデフレの中にあって、原油価格が大幅に下落する中では米国だけがそれを達成するとは考えられず、年内に利上げに本当にこぎつけられるかどうかがかなり不透明になりつつあります。

2.中国や新興国の問題も遡上に

今回のFOMC声明文には、中国の経済的状況や新興国の状況も懸念事項として掲載されることになっており、8月24日に相場が大幅下落したことも無視できない状況を示現しています。

9月末には習近平の訪米もありますので、人民元切り下げや外貨準備、米国債の売却などの問題でなにか進展があり、政治的な合意がなされることでもあれば、さらに利上げが難しくなることも予想され、単なる一ヶ月利上げ実施延期となるだけなのかどうかが注目されるところです。

実際には、利上げを後ずれさせればするほど、その実施を困難にさせる要因が増えてくることが予想される上、0.125%程度をアリバイ的に利上げしたとしても、その先が続かないのであれば、ほとんど利上げ自体の意味がなくなることも考えられるのです。

3.今後のスケジュールについて

今回利上げが見送られたことで10月以降は以下のようなスケジュールが注目されることになります。

10月

10/6~10/7日銀政策決定会合

9月1日段階で、今年日銀が買い入れられるETFの予算残額が7,100億強と発表されており、3日に1回購入すれば11月初旬には資金が枯渇する可能性があり、このタイミングでもETF主体のつい緩和期待が高まることになりますが、次回FOMCの前に日銀だけが緩和を行うかどうかは不透明となります。

10/22 ECB理事会

ドラギはほぼ口先介入でユーロを下げており、この会合でも更なる緩和を匂わせる可能性大となります。
ユーロドルの下落がドル円に影響することも想定されます。

10/27~10/28 FOMC

次回FOMCの結果発表は29日未明となりますが、果たしてこのタイミングで実施できるのかどうかが注目されます。

10/30 日銀政策決定会合2回目

7日がFOMCの前で様子見になるとしても、FOMCの実施と連動してETF買いを発表する可能性に外人投機筋からの期待が高まっています。

11月

11/4 郵政三社上場

11/18~11/19 日銀政策決定会合

12月

12/3 ECB理事会

12/15~16 FOMC

12/17~12/18 日銀政策決定会合

12月についても、もちろんFOMCの決定ができることになりますが、本当に12月中旬にこうした決定をするのかどうかは、日程からみるとかなり微妙といわざるを得ない状況です。

4.FOMCの政策に対するレイダリオの厳しい指摘

米国最強のファンドと称され、業界内でも大きく注目される存在であるブリッジウォーターアソシエイツのCEO/レイダリオは、FRBが無理をして利上げをしてもじきにQE4を行うことになる旨を指摘しはじめています。
実際、QE4の必要性を説くメディアの論調もこれに追随するようにして高まっています。

レイダリオは、デフレ方向の景気縮小の脅威が世界中に広がると予想しており、FOMCは2016年早々に跳ね返ってくる打撃から米経済を守るため、大量の流動性を投入せざるをえなくなるだろうと述べてQEに追い込まれると予想しています。

また、FRBが引き締め路線にコミットするあまり、かなりの緩和措置が必要になった場合でさえも、その路線変更が困難になるリスクに我々は直面しているとも発言しており、利上げありきのスケジュールでFRBが動いている点が選択肢を狭めているとして厳しい指摘をしています。

確かに、年内利上げの可能性を先だししてしまったことがイエレン議長の発言にも苦しさをにじませているところがあり、この点では失敗であったともいえる状況が続いています。

5.ローレンスサマーズのツイート発言もFRBに少なからぬ影響を与えている模様

米国のクリントン政権時の財務長官であったローレンスサマーズは、9月のFOMC前にかなりの頻度で利上げをけん制しています。

このサマーズの長期停滞論は、スタンレーフィッシャー副議長をはじめとしてFRBを構成するMIT学派の理論的支柱をなすものとなっているほど大きな影響を与えていますから、今回の利上げ見送りにも影響を与えていることは間違いなく、サマーズの発言からすれば、10月以降もそう簡単には利上げに踏み切れないことが予想されます。

6.10月末までの株と為替の二番底にも注意が必要

8月24日の中国相場に起因する突然の暴落では、米国S&P市場のVIX指数が52をつけてリーマンショック以降最大の数字を示すこととなりました。

これまでの通例からすれば、VIX指数が上昇したあと1ヶ月から最大2ヶ月の間に、株は二番底をつけにいく可能性が高まっており、スケジュール感からいえば10月末のFOMC前にそれが起こるリスクも高まっています。

特に、9月は米国の株価が最も下落するタイミングであるため、利上げの前に暴落がくることも想定しておかなくてはならない状況が近づいている可能性もでてきているのです。

すでに一部の米系投資ファンドでは、200日移動平均線を株価もドル円も下回っていることから安易な逆張りをすべて中止し、相場の下落に備える動きもでています。
これに習えば、もう少し相場の経過を慎重に見極める必要がある時期に向かっているのです。

大幅下落は、NYダウのみならず日経平均とドル円に深刻な下落をもたらすことになると思われ、今回利上げが実現しなかったことから、ここ1ヶ月強は二番底形成の動きにむけて十分な注意が必要となってきています。

7.結局年内利上げなしのシナリオも想定しておくべきか

自分の口から年内利上げを示唆してしまった関係で、イエレン議長は常に利上げの可能性を含む発言を繰り返していますが、実際既に年内の利上げタイミングを逸してしまった可能性も高く、このまま利上げなしというシナリオも想定しておく必要がでてきています。

また、ドル円はすでにピークをつけて年末にむけて円高方向に動くこともありえる状況となってきています。

今年は、金融市場の最大の注目ポイントがFRBの利上げでしたから、ここまで後ずれすることは既に想定外ですし、利上げ要因よりもあげない可能性のほうが日々大きくなっている点は見逃すことができない状況となっています。

世界経済がデフレに逆戻りし、新興国から資源国総じて景気後退を叫び始めているときに米国だけが一人勝ちする可能性はほとんどありえない状況であり、利上げという出口戦略が失敗に終わる可能性もでてきています。

ここからの市場は思い込みだけではなく、相場状況に合わせてその見方を柔軟に変えるべき時期に差しかかっているようです。


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