イギリスのEU離脱問題(BREXIT)の背景とその本質・影響について

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イギリスのEU離脱をかけた国民投票がいよいよ23日に迫り、それまで大きな動きをみせてこなかった金融市場は俄かに動きが激しくなりつつあります。

当初は離脱はほとんどありえないという楽観的な見込みが市場を支配していたわけですが、ここへ来ての世論調査の結果や賭け屋の残留、離脱の比率が変化しはじめたことから、UKのEU離脱を市場は織込まざるを得なくなってきたというのが実際のところではないでしょうか。

今回は、FOMCよりも日銀の政策決定会合よりももっとも注目されているBREXITの背景とその本質、そしてその後の影響についてまとめてみることにします。

そもそも強固な経済圏を作り上げるのがEUの目的

80年代や90年代の初頭に欧州を旅行した方なら誰でも記憶があると思いますが、とくかく欧州各国というのは地続きでありながら、国ごとにインフラが異なり、電気のコンセントひとつとっても満足な互換性は無く、国を移動するごとに通貨を両替するといった非効率の塊のような地域を長く継続してきました。

もちろんそれには長い歴史の存在が大きく影響しているのですが、グローバリズムの一層の進展の中にあって米国と互角の力をつけた経済圏を作り上げるためには、より社会の仕組みを標準化し、域内での経済活動を活発なものにしていくことが必要とされたことから、現在のようなEUの体制が出来上がることとなったのです。

これによりほとんどの国でユーロが共通通貨として機能し、EU域内の人の出入りも格段に自由になり、経済的にも大きな発展が期待されることとなりました。

中央銀行・ECBは存在しても国の財政は各国任せの状況が大きな問題

机上の理論としてのEU圏はより成長を加速するはずでしたが、実際のEU圏は大統領が存在し、すべての加盟国を統制する中央銀行であるECBも設立はされましたが、共通通貨は使っていても財政のコントロール自体は各国に委ねられ、このことが結果として加盟国間出の大きな歪みを形成することになってしまったのです。

南欧諸国のスペイン、ポルトガル、イタリア、そしてギリシャなどは債務が大きな問題となり、とくにギリシャはEU加盟当時から加入要件に満たない財政状況であったことが2010年になって突如として表面化したことからドイツをはじめ支払い余力のある主要国は周辺国を財政的に救済するために大きな金銭的負担を求められるようになったのです。

イギリスもそうした財政負担国のひとつであり、英国民にとってはもともと親和性の低いEU加盟国を助けるために余分な費用負担を強いられることとなり、そもそも独立性が高かったこの国ではEUに加盟していることに不満をもつ国民が非常に増加していったという不幸な経緯があります。

ドイツの一人勝ちのEU

EUができてもっとも利益を得ることができるようになったのは貿易立国であるドイツであり、EU内でも金銭的な負担ボリュームが大きいだけにその発言権というものは日増しに大きなものとなってきたことは間違いありません。もともとドイツと何度も戦争をして相容れない存在であるイギリスにとってはドイツの言いなりになることを良しとしない国民も多く存在し、これもEU離脱の火種として長くくすぶり続けた大きな原因となっていることは間違いありません。

もともと大英帝国として世界の国土の5分の2以上を第二次世界大戦の直後まで維持してきた英国民にとっては今のEUにおけるドイツのと関係に納得のいかない層も多いようで、このあたりは極東の島国である日本人には今ひとつ理解しにくいセンチメントが確実に存在していることを感じさせます。

移民問題は経済的な面ではトレードオフできない国民的憎悪を形成

こうした状況の中で、シリアからの移民問題が、英国民の憎悪感に一気に火をつけることとなってしまいました。もともとイギリスはEUの一員となってから20万人程度の移民を受け入れてきましたが、実にそのうちの17万人はEUを通じての受け入れであり、EUに加盟していることが移民の受け入れを余儀なくされる状況となっていたわけです。

しかし、イギリスも他の先進主要国と同様に貧富の格差は年々大きくなってきており、労働者は移民のおかげで職を奪われ富を失うという不満が非常の高まりつつあるのです。こうしたことが経済学的には納得してもEUにはいたたまれない国民的な憎悪を形成していることは間違いなく、移民問題が今回EUからの離脱に大きく火をつけている状況にあるのです。

したがってEU離脱で関税がかかるとかGDPが大きく失われるといったネガティブな情報がいくら出てきても多くの労働者階級の国民にはほとんど響かない状況が示現しはじめている点も、足もとでの離脱優位の世論調査結果から透けてみえてきている状況といえます。

本質は協調的なグローバル経済から離脱を志向する国民の発想が背後に存在

このようなEU域内での協調的な体制に参加することよりも自国の独自性をより大切にしたいという国民の考え方はなにもイギリスだけのものではありません。

よくよく考えてみますと、トランプ候補などというかなり過激な発言で自国の利益を守る発言を公然と繰返す米国の大統領候補が広範な国民の支持を得ている米国も根底にあるのは同様の問題であり、グローバリズムによる国際協調よりも自国の利益をより大切にした国へと舵を切りなおすことを切望する国民が、先進国で着実に増えつつあることを示唆しているのはどうやら間違いないようです。

これは資本主義の成熟化の過程で共通的に現れるアンチグローバリズムの動きにも見え、多くの国がこうした路線変更を行っていく可能性があることを示しているともいえます。

EUにおけるイギリスの今回のような動きはその後に同様の動きをする加盟国を出しかねない状況になってきているのです。

日本は資金の逃避先として猛烈な円高のリスクに直面

さて、UKのEU離脱が過半数以上の支持を得ることができるかどうかはとにかくその結果を見る以外には判断のしようがない状況ですが、残留が決まればとりあえず売られたポンドは大きく買い戻しがでてもとの鞘に戻ることとはなるものの、現実に離脱が決定した場合には、想像以上の影響が金融市場にでることが予想されはじめています。

ポンドの場合主要通貨に対してほぼ10%から20%程度の下落を示現することになるであろうという予測が出されています。

対円で言えば150円が135円から120円程度まで円高が進むことになり、ユーロ円もそこまでにはならないとしても同様に追随した動きになることは容易に予想されます。

現状でもドル円は105円台を切りそうなところにいますから、この円高の動きになると100円にごく近いところまで下落することが考えられます。

多くのエコノミストやアナリストは103円や102円方向という言葉をつかって具体的なレベルを口にしないようにしているようですが、オーバーシュート気味に市場が動けば、ドル円が100円を切る可能性も十分に考えられるのが今の状況といえます。

この場合ドルも高くなることが考えられますが、日本政府だけが急激な円高を大義名分にして本当に為替介入などができるのかどうかも注目されるところとなりそうで、現実にはイギリスという特別な事情が絡んでいるだけに何もできないままに円高が示現してしまう可能性が高くなっているのではないでしょうか。

株式市場には投資資金はめぐってこないという皮肉な状況

UK、とくにロンドンのシティから投資資金が逃げていくことになっても株式投資の資金は残念ながら米国にはシフトしても日本の株式市場に流入を期待することはほとんどできないのが現状です。

むしろ為替との連動性の中でドル円が100円を切れば日経平均が一時的に1万4000円を割り込む事態に陥ることも想定しておくべきでしょう。しかもこのBREXITの問題は事が起きてから落ち着きがでるまでにかなりの時間がかかると見られていますから一旦下落した日経平均は簡単には戻らない可能性があることも認識しておくべきです。

参議院選挙があるから政策対応で株価は上昇などという期待が大いなる幻想となる相場が示現することも覚悟しておかなくてはなりません。

離脱が決まってもかなりの長期戦となることは間違いなし

今回投票によって離脱が国民多数の意思であることがわかっても具体的な離脱までには2年の歳月がかかるとされています。またEUにとってもマイナスな要素が多いUKの離脱をめぐっては、EUによりEEAのメンバー国に収容する動きが出る可能性が高まっています。このEEAとはEuropean Economic Areaの略号で、欧州経済領域とする共同市場を指しています。現在ノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインが加盟していますが、EUではないものの一定の関税を免除される準加盟国の扱いで、イギリスもここに収まる可能性がでてきているのです。

ただしこのEEAに入るためにはEU加盟国すべての承認が必要となるため実際には10年以上の歳月がかかるとされており、離脱が決まってからその後どのような位置づけになるかをめぐっては気が遠くなるような時間がかかる可能性がでてきているのです。その間にイギリスがどのぐらい金融市場で圧迫を受けるかはまったくの未知数であり、英連邦としての底力を発揮することができれば、意外に損失は軽微に収まるとの楽観論もあって、なかなか先を見通すことはできない状況です。

EUの弱体化がポストBREXITの争点へ

UKの離脱が決まっても決まらなくても、その先に登場するのがEUから独立を考えている他国の動きが顕在化しようとしています。イタリアをはじめ、スペイン、フランスなどが同様の動きを加速させる可能性があり、UKのダメージよりもむしろEUの存続に関するダメージのほうが大きくなり、最終的にEUの崩壊の引き金を引くといったネガティブな見方も市場には広がり始めています。

まずはUKの国民投票ですが、その背後の動きとしてでてくるものは、より広範で深刻なEUサイドの問題になることについても意識しておく必要があるのです。

とにかくここからの10日間程度は株も為替も慎重にポジションを持つようにし、あまり適当なレベル感だけで売買をしないように用心することが重要です。

とくに為替の世界ではポンドの扱いは投資から博打の世界に移行しつつあり、非常に危険な時間帯にさしかかっていることだけは間違いなく、迂闊な売買は証拠金を無闇に減らすことになることを肝に銘じておくべきです。


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