ベンジャミン・グレアムの基準に適合する「グレアム銘柄」の探し方

「割安株」という言葉をこれまで何度も使ってきたが、割安株とは企業の本来の価値よりも低い株価で取引されている株のことを指す。

しかし、企業の価値を判断する方法や、真の価値と実際の株価にどれくらいの乖離があれば割安と言えるのかについては、様々な説がある。

そこで、ベンジャミン・グレアムが提唱する基準を満たす割安株のことを、特に「グレアム銘柄」と呼ぶ。

グレアム銘柄の基準は以下の通りである。

  • 時価総額が純流動資産(流動資産から流動負債を差し引いたもの)の2/3(できれば1/2)以下であること
  • 流動資産が流動負債の1.5倍以上あること
  • PERが15倍以下であること(大企業の場合には6~10倍が望ましい)
  • PBRが1.2倍以下であること
  • 過去10年間、赤字を出していないこと
  • 過去20年間、配当が支払われていること

この基準を満たす銘柄を、東洋経済新報社の『会社四季報』と、各企業のバランスシートを利用して見つけていき、10~30銘柄に渡って分散投資をしていくのがグレアムの手法である。

本稿では筆者が毎年4回、四季報が出る度に実践している方法を紹介する。

四季報で割高銘柄を除外する

グレアム銘柄を探すにあたって、最初から当たりを付けて探してくことはできない。

投資雑誌で割安銘柄として紹介されている銘柄は、グレアム銘柄の基準からは大きく外れているものがほとんどである。そのため、グレアム銘柄の基準に適合する銘柄を探すにあたっては、四季報に掲載されている約3600社全てを調査するほかない。

3600社の企業を調べるためには、多大な労力と時間がかかる。しかし、もとより株式投資はラクして儲けられるものではないため、労力と時間をささげる心意気があることを前提として進めていく。
まずは、会社四季報を用いることで、割高銘柄を全て弾いていく。何を以て割安とするかと言えば、時価総額が純流動資産の2/3以下であることである。

残念ながら四季報には純流動資産は掲載されていない。しかし、財務欄には時価総額と総資産が掲載されている。純流動資産は総資産に含まれるものであるため、時価総額が総資産よりも高い銘柄は必然的に割高となるため、これを次々に除いていく。

また、時価総額が総資産よりも低かったとしても、経験上、時価総額が総資産の2/3を上回るようであれば、グレアム銘柄の基準を満たすことはほとんどないため、それも省いていく。証券コード1301・極洋から9997・ベルーナまで全てを見て行き、割高株を弾いていく。

また、四季報には直近3年分の業績も掲載されている。グレアム銘柄では過去10年において赤字がないことも条件となるため、四季報の業績欄で赤字が見られるものも省いていく。

このようにして投資不適格を弾いていくとき、赤ペンでバツを付けるなどすると良い。その時の相場の状況にもよるが、半分以上の企業が投資不適格と判断できるはずだ。

ちなみに、四季報は通常版よりワイド版のほうが良い。書き込みなどすることもあるし、付箋紙を貼ることもあるから、通常版だと非常にごちゃごちゃとしてしまうためだ。ワイド版は通常版に比べて500円ほど高いが、ケチるところではない。

バランスシートで割安株を特定する

最後のページまで行き割高株を全て省いたとしても、残った銘柄が全てグレアム銘柄というわけではない。あくまでもグレアム銘柄である可能性があるというだけだ。グレアム銘柄の基準である「時価総額が純流動資産の2/3以下」を満たすかどうかは、企業のバランスシートを見ながら全て検証する必要がある。

効率よく調べていくためには、決算プロ(http://ke.kabupro.jp/)がおすすめだ。このサイトで、右上の検索窓に証券コードを入力することによって、企業の直近1年分の決算短信を見ることができる。

割安の可能性があると判断した企業全てをここで検証していく。証券コードを入力し、直近の決算短信を開き、貸借対照表における流動資産から流動負債を差し引いて純流動資産を算出し、時価総額と比較する。この時、流動資産が流動負債の1.5倍であるかどうかも検証していく。割り出した純流動資産は四季報の余白に書き込み、適合する場合には付箋紙を貼っていくと後でまとめるときに便利である。

全ての企業をふるいにかけると、ほとんどの企業は脱落する。筆者が今年4月に会社四季報の春号を用いて行った結果では、この基準を満たす銘柄は98銘柄であった(もっとも、割高株を弾く際に不注意で弾いてしまっているものもあるかもしれないが)。

その他の情報を集める

時価総額が純流動資産の2/3以下の銘柄を集めたならば、次にその他の情報も含め、エクセルにまとめていく。

筆者は証券コード調査時点での時価総額、純流動資産、時価総額と純流動資産の比率、業種、PER、PBR、ROE、配当率、備考をまとめている。

※参考画像(筆者が見つけた銘柄の特定につながりやすい情報にはモザイクをかけています。)
20160426_02

業種をまとめるのは、分散投資の際に業種間での重複を避けるためである。
分散投資はできるだけ広い業種を対象とすべきである。PERが15倍以下であることPBRが1.2倍以下であることはグレアム銘柄の基準であるから、この情報もまとめる。ROEに関してはグレアム銘柄の基準では絶対的なものではないが、高いに越したことはないためまとめている。

備考欄では、その企業の特徴をまとめる。これは、どこかの地方でトップシェアであったり、ある製品の独占企業や寡占企業であったり、特定の大企業と大きな取引をしていたりといった質的要素である。グレアム銘柄の基準としては含まれていないが、これも知っておくことに越したことはないため記載している。

こうしてまとめていくと、PER・PBE・配当金(現在配当金を出していない)などでグレアムの基準に適していない銘柄をさらに省くことができる。
もっとも、時価総額が純流動資産の2/3以下の企業というのは市場から圧倒的に注目されていない銘柄であるため、ほとんどがPERとPBRの基準を満たす。しかし、中にはPERが高い銘柄もあるため、それを省いていく。

ちなみに、グレアム銘柄ではこれらの細部の情報よりも、なにより時価総額が割安であるかどうかが最も重要である。そのため、このような表を作る時には時価総額と純流動資産の比率を算出した結果、より割安であるものから順に並べていくと見やすい。

より詳細な分析

次に分析すべきは、過去10年間赤字がなく、配当金があることである。
これを調べるためには、企業のホームページのIR情報を閲覧し、過去10年分の期末の決算データを見ながらエクセルにまとめていく。例えば、筆者は以下のようにまとめている。

20160426_03

せっかくだから、過去の決算データを10年分調べるときに得られる情報は色々と記載して参考にしている。過去10年分の純流動資産の推移、売上げの推移、純利益の推移、その年の売上における純利益の割合である。これを記載していけば赤字の有無を確認できるだけではなく、売上げが順調に伸びているか、利益が順調に伸びているか、利益率はどう変動しているかなどが分かる。

利益率が伸びていても売上が下がっていれば好ましくないと判断できるし、売上げが上がっていても純利益が伸びていなければなぜなのかを調べる価値がある。
また、売上げが変わっていないのに純利益が急激に伸びているものもあるが、それも調べてみると色々な事実が分かってくる。基本的には赤字がないことと配当があることがグレアム銘柄の基準になるが、それを調べるうえで疑問が湧けば調べておいて損はない。

ちなみに、企業ホームページを見たとき、過去10年の決算情報が掲載されておらず、例えば5年くらいしか掲載されていないことがある。そのような場合には、企業に電話をして請求すれば、メールなどで送ってもらうことができる。中には頑なに送ろうとしない企業もあるが、そのような企業はその時点で株主への配慮不足として投資不適格としてよい。筆者も過去にそのような不良企業に出会ったことがある。過去10年分を送ってほしいといったところ、5年分しか公開しておらず、それ以上を見たいならば有料コンテンツを利用せよという。有料コンテンツとは何かと聞くと、60万円もする有料コンテンツを紹介された。一企業の過去10年分の決算データをみるために、このような高価なコンテンツを推奨するとは、正気の対応とは思えない。金融庁に届け出をしたところ、監査監督の参考にするとのことであった。

さて、このように調べていくと、過去10年間において赤字がない企業が非常に少ないことが分かる。なぜならば、今からさかのぼる過去10年間には、サブプライムローンによる世界同時株安があったからである。この時に赤字になった企業が多い。しかし、世界同時株安の際にも黒字をキープした企業は確かにある。そのようなグレアム銘柄の基準を満たす企業は16社見つかった。

この16社の全てに投資しても良いと思うし、もし絞りたいと思うならば様々な情報を比較検討し、企業の経営成績や財務状態の分析を含めた質的要素の検討をするのも良いであろう。グレアムの基準によって、すでに量的分析をこなしてリスクが極めて低い銘柄を選択したのであるから、そのうえで質的要素を見て行くのは大いに結構だと思う。

まとめ

上記の分析を丁寧にこなしていくのに、筆者は毎回200時間程度を要する。分析が楽しいので、全く苦ではない。毎日15時間くらい費やし、2週間ほどで全てを終える。グレアムの基準を全て満たしていることから全く不安はないため、すぐに買い付けを行っている。もちろん、その後に質的な分析を少々加えるし、経済紙や投資雑誌は逐一チェックしてポートフォリオの参考にする(それらの情報によってポートフォリオが変更されることはほとんどない)。

すでに述べた通り、この作業は四季報が発売されるたびに行う

もちろん、前の号と次の号ではそれほど大きな変化がないことが多い。しかし、丹念に調べていくうちに、新たな投資適格が1つ、2つと見つかってくるものなのだ。それを見つけるのは宝探しをしているようで非常に心楽しいことである。

グレアム銘柄を探し当て、賢明なる投資をしていくためには、勤勉さが不可欠である。今回、自分のやり方を公開するのは少し気が進まない部分もあったが、このようなことをコツコツやるよりは、より簡単な手法を採用する人が圧倒的に多いため余り心配ないだろうと思って書くこととした。実際、グレアムが『証券分析』を発表してすでに80年以上も経つが、グレアムの手法を採用した投資家は非常に少ないのだ。

繰り返しになるが、
グレアムの手法を実践する投資家は非常に少ない。

人と同じことをしていては儲けることができないのだから、これはチャンスだ。グレアムの手法では地道な作業の積み重ねることになるが、センスもないのに直感や浅い分析で投機に走るほとんどの投資家はこれによって蹴散らすことができる。

もし時間と労力が許すならば、皆さんも実践してみてはいかがだろうか。

※ここで公開した分析の進め方はあくまでも一例です。グレアムの手法では重視されていないことも参考にしています。グレアムの基準を一切外していませんが、見方によっては亜流です。本稿に学ぶのよりも、皆さんそれぞれがベンジャミン・グレアムに学び、自分にやりやすいように分析することをお勧めします。

\ついに完成/
FX三種の神器

「なぜこれが無料?」という声多数。
一撃100pipsは当たり前、初心者が迷わない唯一のツール&トレードマニュアル(PDF 32P)

さらにコアな情報をゲット
ブログ公式LINE@

ブログでは言えない稼げる投資情報を複数持っています。ご興味のある方はLINEで♪

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

ABOUTこの記事をかいた人

個人株式投資家、兼フリーライター ゴーストライターとして株式投資の短期売買の書籍を執筆したことから株式投資に興味を持ち、独学で勉強を始める。ベンジャミン・グレアムの投資理論に傾倒するようになり、グレアムの理論を習得すべく『賢明なる投資家』を全文手書きで筆写した。その後株式投資を再開、成績は良好。真のグレアム学派になるべく、日々研鑽を積み重ねている。