TPPが注目を集めている今こそ農業と環境について考える

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TPPが話題になり、最近は農業に注目が集まっています。
しかし、ただ注目が集まっているだけでは意味がありません。

農業にはさまざまな問題があり、今まではあまりそのことが表に出ることはありませんでした。
ですから、TPPで注目を集めている今こそ重点的に調べていく必要があるのです。

1.農業に関わる環境問題

第一次産業として、農業は食料生産の役目を一手に担っています。
近年は、化学肥料や農薬、機械化など、農業を効率的に進めることができるシステムの整備や改善が進む一方、健康志向や環境への負担を減らすといった取り組みに基づいてつくられた有機栽培農産物や、地産地消的な農作物に注目が集まっています。

さて、「環境にやさしい」とされている農業も従来の農業も、実際にはどの程度「環境」に影響を与えているのでしょうか。

今回は、農業が与えている環境負荷について考えてみたいと思います。

2.農業と二酸化炭素

まずは、環境問題と言えば、と思い浮かべる人も多い「地球温暖化」問題です。

この問題は、二酸化炭素が有名ですが、他にもメタンや亜酸化窒素こと一酸化二窒素など、温室効果をもつ気体の発生量が、人間活動によりたくさん生産されることが原因で起こります。
実は、農業では二酸化炭素はもちろん他の二つの気体も発生するのです。

二酸化炭素は、化石燃料の燃焼が主な発生源で、農業では草刈り機などの機会を動かす際や農産物を遠隔地へ運ぶことビニールハウスの加温などでは放出されています。

環境への負担を表す指標としてしばしば使われるのが、農産物の生産地から消費地へ運ばれた距離を表す指標であるフードマイレージです。

ただし、この数値は農産物の重量と距離以外は考慮していません。
つまり、輸送手段は考えていないため、化石燃料消費がより大きい航空機を使った輸送も、より少ない貨物車を使った輸送でも同じ値になってしまいます。

輸送以外に二酸化炭素を膨大に放出するのがビニールハウスの加温で、近郊のビニールハウス栽培と遠隔地の露地栽培では、輸送時に発生する二酸化炭素を考慮してもビニールハウスの方が二酸化炭素は多く発生してしまいます。

3.農業とメタン

メタンの発生源として意外に思われるかもしれませんが、主な排出原因はウシのゲップです。

これは、アメリカ合衆国やオーストラリアのような大畜産国で特によく研究されています。
メタンは二酸化炭素と比べると非常に温室効果が強い気体で、アメリカ合衆国ではウシのゲップによるメタン発生量は、メタンの発生総量の毎年26%程度を占めていると言われています。

また、畜産の排出物が分解されることによって一酸化二窒素のような物質も発生します。

4.農業と窒素による環境汚染

畜産排出物として、メタンと同じくらいに問題視されているのが、過剰な窒素分による環境汚染です。

窒素肥料、畜産動物の排出物にはたくさんの窒素が含まれていますが、植物が吸収できる分の量をこれらが越してしまうと、余った窒素は地下水や河川など水系に流れ込みます。
窒素が亜硝酸塩と呼ばれる化学物質に変化すると、血液中のヘモグロビンと結びついてチアノーゼとなるため、畜産動物などの健康被害をうみます。

また、水系に大量の窒素が流出すると富栄養化が起こり、赤潮が発生します。
赤潮が発生すると魚は鰓を詰まらせて呼吸ができなくなって死亡し、漁獲するタイプの水産業はもちろん、養殖業にとっても大きな被害になります。

また、赤潮で増殖するプランクトンの中には毒を持つ者もいるため、貝類が毒化し、食べると中毒を起こす原因となりうることも知られています。

5.農薬の環境に対する影響

環境を汚染と言えば農薬を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
DDTやダイオキシンといった「環境ホルモン」と呼ばれる内分泌かく乱物質という化学物質がホルモンバランスを乱した結果、貝のオス化やワニのメス化が起こったという報告はあまりにもショッキングであり、この化学物質を一躍有名にしました。

とはいえ、研究が進むにつれてこのような化学物質は生物に対する毒性が種によってかなり違うことが報告され、当時の研究結果の中には今では訂正された部分も見られます。

6.昔の農薬、今の農薬

農薬は、かつて劇物指定などの危険物も多くありましたが、現在ではそのようなものはむしろほとんどなくなっています。

現在の農薬は、昔のようにすべての生物に幅広く効き、かつ毒性が強いものではなく、ある限られた生物にのみ毒性を示し、かつ短時間で簡単に分解されるものが中心になっています。
要するに、人間に対して影響が少なく残留もほとんどないような農薬が開発されるようになっています。

とはいえ、一部の動物に毒性を示すという事実は変わりません。
この事例で有名なのが、ネオニコチノイド系農薬が原因とされているハチのコロニー崩壊です。

7.新しい農薬:ネオニコチノイド農薬の登場とハチの大量失踪

ネオニコチノイド系農薬は、有機リン系農薬に替わる、人に対して負担が少ない農薬として登場しました。
有機リン系農薬は、昆虫にも人間にも存在する神経回路に作用するため、人への影響が心配されていました。

一方のネオニコチノイド系農薬は、昆虫には存在するものの人間には存在しない回路に働きかける農薬であるため、人間に対してほとんど影響がなく昆虫にのみ作用する夢のような農薬として登場しました。

しかし、当然ながら害虫のみではなく、農作物受粉用やはちみつ採集用の「益虫」であるミツバチにもこの農薬が働いてしまいました。

結果、ミツバチの行動に異常が生じ、巣に帰れなくなってしまったためにコロニーのミツバチがごっそり失踪してしまうという蜂群崩壊症候群(Colony Collapse Disorder、CCD)が起こったとされています。
アメリカ合衆国における被害は甚大で、はちみつの値段や授粉用ミツバチの値段が大幅に上がったことに加え、多くの養蜂業者が廃業に追い込まれたと言われています。

8.農業と環境問題の改善策

このように、農業は生態系や環境に大きな影響を与えているものの、たくさんの改善策が模索されています。

例えば、二酸化炭素排出量の削減を国際的に取り決めた条約である京都議定書のほか、3‐ニトロオキシプロパノールという化学物質を餌に添加すると、ウシのゲップからのメタン排出は30%削減できることが報告されています。
農業機械では、より小回りが利いて燃費の良いものを作り出すべくたゆまぬ努力がなされています。

さらに、機械でのモニタリングや施肥量の実験から、農作物にとって適切である肥料の量を求め、過剰な施肥をしないようにする試みも進んでいます。
そして、農薬では、より人間に対して影響が少ない狙った害虫のみを確実に殺すことができ、分解スピードが速く残留しにくい農薬の開発が進んでいます。

まとめ

まずは、多くの人が興味を持つことです。
いくら、団体として政府に抗議をしても、国民の殆どが関心をもっていなくては、政府の重い尻も持ち上がりません。
ですから、何事も他人事ではありません。

1つの出来事を自分自身のことと考えて、農業について興味を持つことから始めていきましょう。


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