2016年11月から年末までの為替相場リスクを考える

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いよいよ今年も年末まであと2ヶ月となりましたが、米国の大統領選挙という大きなイベントを通過しても、年末まではまだかなりのリスクイベントが為替相場を待ち構えることとなり、気を抜くことはできない状況にあります。

今回はそれを整理してご説明していくことにいたします。

11月30日ジュネーブのOPEC総会に注目

米国の大統領選挙については既に勝負ありといった状況ですから、この結果をめぐって株や為替が大きく崩れるリスクはかなり遠ざかったといえますが、問題はその先に存在します。

足元の株価が崩れずに済み、昨年以上の中国の人民元安もほとんど市場で問題になっていないのは9月28日のOPEC加盟国の原油減産が基本的に合意されたことが大きな後ろ盾になっていることは間違いありません。
しかし、総論賛成となった減産合意ですが、最近になってイラクのルアイビ石油相が10月23日のバグダッドでの記者会見で、同国が過激派組織・イスラム国との戦闘に巻き込まれている現状を理由に挙げ、減産の適用対象から除外すべきだと主張しはじめており、減産が一筋縄ではいかないことを示唆し始めていることから、原油先物相場も1バレル50ドルを割り込む水準に低迷しはじめています。

減産からの除外を求めているのはイラクだけではなく、すでにイラン、ナイジェリア、リビアが除外を求めており、具体的な国別の減産については相当もめることが予想されているのです。このOPEC総会ではサウジアラビアがどこまで譲歩して加盟国をまとめられるかが大きなポイントになりつつありますが、そのサウジは10月に日本円にして1兆8000億円を超える規模の起債を行っており、さらに来年以降はアラムコの国際部門のIPOという史上最大規模のイベントも控えていることから、ここからの原油価格の大幅下落は都合の悪い事象になりつつあります。

したがってサウジ自身が積極的に減産に取り組む姿勢が求められることになりそうですが、毎回減産合意に至ってもその後加盟国が合意内容に基づいてまともに減産を行わないというのがOPECの慣例と化しているのもまた事実で、果たして減産がうまく機能するかどうかが大きく注目されることになります。

万が一国別の減産措置がまとまらないといったことになりますと、米国をはじめとする株価にも為替相場にも甚大な影響を及ぼすことになり、12月に利上げが見込まれつつある米国のFOMCの動向にさえ影響を与えかねない状況で、この会議の結果は非常にクリティカルです。

12月4日イタリア国民投票

これも国内では米国の大統領選挙の影にかくれてほとんど話題になってこなかったイベントですが、イタリアでは12月4日に憲法改正をめぐる国民投票が実施されようとしています。

イタリアという国は日本に負けず劣らず政権がころころ変わる国であり、過去70年で63回も政権が変わった実績をもっているのです。

今回レンツィ首相が憲法改正のための国民投票を実施しようとしているのは、上院の定数削減と権限縮小、つまり上下両院の立法権等を同等から下院優位にするかどうかと地方自治体の単位である県の廃止の是非を問うものとなっています。

イタリアは日本と同様に二院制となっていますが、かつて独裁者が存在したことに対する反省もあってこの二院両方にまったく同等の立法権限が与えられ、しかも議員数が非常に多く多数政党のねじれも存在することから、議会ではなにも決められないという大きな問題に直面するようになっているのです。

レンツィ首相はなんとしてもこの改革を断行するために意を決して国民投票に打って出たわけですが、どこの国も同じで国民サイドの関心はそれほど高くなく、逆に国民投票で改憲が実現できなければ今の内閣は辞職すると表明していることから総選挙が実施されることとなり、むしろイタリアはEUから離脱すべきかどうかといった英国と同じような問題のほうが今後大きくクローズアップされることになりそうなのです。

イタリアはご存知の通り主要な金融機関が瀕死の状況に陥っており、そうでなくても建て直しがかなり難しくなっていますが、ここで政権が崩れることになると政治体制が大きく変化することが予想されます。足元で懸念されているのは、左派ポピュリストの台頭で、世論調査では立て続けに、お笑い芸人ベッペ・グリッロが率いるポピュリスト政党「五つ星運動」が、中道左派の与党・民主党(PD)を抑え1%未満の僅差ながら支持率トップとなっている点は憂慮すべき状況です。

この国でもやはりグローバリズムより保守主義を志向する国民が多くなっているのが現状で、年末のイタリアの国民投票は欧州圏でも非常に高い関心をもって見られているのです。この結果次第ではユーロが大きく売られることも考えられ、予断を許さないところに来ているというわけです。

ECBのまさかの12月理事会でのテーパリングを決定というリスクも

10月のECB理事会後の記者会見ではテーパリングの実施は考えていないと頑なに否定したドラギ総裁ですが、10月25日のベルリンでの講演では、時間とともに厄介な副作用が蓄積する可能性があり、金利をこのような低い水準に極めて長い期間維持せずに済むことをもちろん望むとも述べ始めており、
緩和措置に対してなんらかの見直しをかけてくる可能性も否定できなくなっています。

またドラギ総裁はQEをテーパリングすることなく、唐突に停止することはないとしていますが、既に買い付けられる国債が不足しはじめていることも事実であり、ダイレクトではないにせよテーパリングに近い枠組みを持ち出してくるリスクも考えておく必要がではじめているのです。

12月は米国FOMCだけが注目されていますが、ECBからまさかのテーパリングが飛び出すことになると相場状況は一変することになります。

高圧経済理論を持ち出してきたイエレン議長

米国の大統領選挙の討論会に気をとられていた10月14日、FRBのイエレン議長は講演し、高圧経済という新たな言葉を持ちだして経済状況を説明しはじめたことが徐々に市場でも話題になりはじめています。

イエレン議長自身の説明によれば、力強い総需要と労働市場の逼迫を維持すること、つまり金融緩和でカネをバラまき、財政出動で景気を刺激することを、これからも続けるしかないことを示しているわけで、12月に予想が高まっている利上げとの整合性がどうあるのかに関心があつまりつつあるのです。

市場では12月の利上げ観測をあえて後退させる意図があるのではないかという憶測が飛び交いはじめていますし、一方ではフィッシャー副議長が利上げ実施を口にしながら結局なにもできなかった9月のFOMCの利上げ見送り理由を説明したものであるといった解釈もではじめており、この理論が何を示唆するために持ち出されてきたのかに大きな注目が集まっているのです。

イエレン議長が民主党支持者であることは有名ですが、ヒラリー政権誕生に向けて大統領として順調にスタートを切らせるために株価を大幅に下げる事のないように配慮した政治的な発言だとすると、緩和政策と利上げの整合性が取れなくなるのは間違いなく、本当に12月利上げするのかという問題が再度顕在化してしまうことになるのです。

こちらもまさかとは思いますが、12月利上げを見送った場合には、当面米国は利上げできないのではないかという悲観論が高まることになり、ドルは想像以上に売られることになりそうで、まさかの利上げ先送りも今年残された最大のイベントになるリスクが残っているのです。

極度のチキン状態にあるイエレン議長ですからどう判断するかは確かにまだ判らず、年末ぎりぎりになって最大のリスクが飛び出すこともありえる状況なのです。

このように年末に向かっては、例年と比較しても非常にリスクイベントが多いのが2016年の特徴であり、すんなり年末の上昇相場に向かうとは必ずしも言い切れない状況が続きそうです。

今年は1年を通して為替市場にとっては非常に意外性の多い年となりましたが、年末に向けてそうした意外な展開はまだまだ残されており、相当慎重に取引していくことが求められることになりそうです。


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